戦後ドイツの画壇を代表する画家、ヨルク・インメンドルフが原因不明の難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)との闘病生活の末、先ごろ61歳で亡くなり、彼の芸術活動の拠点であったデュッセルドルフでは大きなニュースとなって取り上げられました。彼の功績を称えて、市内の広場あるいは通りに彼の名前を付けようとする動きも起こっています。
インメンドルフは名門クンスト・アカデミーでヨゼフ・ボイスに師事し、1968年にアクションプロジェクト「Lidl」をスタートさせました。そしてその活動の中で、黒・赤・金の3色に塗られた角材を足に巻き、連邦議会を走り回り、警察に捕まったことで一躍名を馳せるようになったのです。
しかし、彼の挑発的でネオダダイズム的な行動が災いして、アカデミーを翌年に退校させられ、その後は基幹学校の美術教師として働く一方で、東西冷戦など政治的なテーマと対峙しながら芸術活動を続けました。そして1996年にはアカデミーの教授として迎え入れられたのです。
クンストアカデミーでは次世代のインメンドルフが修行中
彼の作品で最も有名なのが、「Café Deutschland」。旧東ドイツの画家、ペネックとの親交を通じて生まれた政治的な歴史絵画です。デュッセルドルフのディスコ、ラーティンガー・ホーフを舞台に、当時の冷戦に関わった政治家や文化人の姿を描いたもので、強烈な印象を人々に与えました。そして遺作としては首相府に飾られているシュレーダー前首相の肖像画が残りました。
話題作を次々と発表し、彼の名を高めた芸術活動の一方で、スキャンダラスな私生活ぶりもマスコミを賑わしました。2003年には彼が売春婦と宿泊したホテルのスイートからコカインが見つかったほか、90年代に薬物を使用した事実を認めています。
とはいえ、彼が20世紀のドイツを代表する画家であるという評価はこれからも変わる事がないでしょう。彼の作品はデュッセルドルフのmuseum kunst palast、ケ ルンのMuseum Ludwig、ミュンヘンの Staatliche Graphische Sammlung といった美術館で鑑賞することができます。この機会に、ドイツの現代美術の世界を少しのぞいてみませんか。
クンストアカデミー正面玄関
大のあんこ好き。馬力と集中力が切れてくる午後 3時のおやつはなんたってあん ぱん。近所の日本パン屋へ調達に走る時ぞ、「デュッセルドルフに住んでいて良かった」と思う瞬間です。