昨年、福島で起きた原発事故はドイツで、エネルギー政策を脱原発へと急転換させるほどの衝撃をもって受け止められました。日本にとっても、原子力頼みの発電事情について再考を迫る大事故であったことは言うまでもありません。エネルギーは目下、両国の重大な関心事の1つ。先月末にデュッセルドルフ市内で行なわれたビジネスセミナー「Tokyo Investment & Business Seminar」も、そのことを改めて認識させるものでした。
大和田野講師による日本のエネルギーの現状説明に、
真剣に聞き入る参加者たち
今年で6回目を迎えたこのセミナーは今回、「再生可能エネルギー技術と東京におけるビジネスチャンス」なるサブタイトルを冠して開かれ、環境やエネルギー分野に関心のある日独の企業人たちが会場を埋め尽くしました。主催者である東京都産業労働局の方によれば、今年は例年になくドイツ人の参加者が多かったそうです。
前半のハイライトは、産業技術総合研究所、環境・エネルギー分野副研究統括の大和田野芳郎氏による講演。東日本大震災を機に原子力発電は縮小を迫られ、中期的には石油や天然ガスなどを利用した電力供給が大きな比重を占めるものの、化石資源には限りがあるため、長期的には再生可能エネルギーの割合を増やす必要がある。さらには電力を有効活用するための省エネ技術の開発やライフスタイルの見直しも不可欠、というのが日本の電力をめぐる展望とのこと。実に単純明快な論理のようですが、大和田野講師いわく、日本ではこれまで再生可能エネルギーの導入に際して制度上の規制が多く、税制優遇措置が取られることも少なかったため、現在は改善策が議論、検討されている段階だそうです。
しかし、希望はあります。それを実感させてくれたのが、東京から駆けつけた5企業によるプレゼンテーションです。 有害な溶液を使わない鉄製品のコーティング技術に、藻類の大量培養により製造 されたバイオ燃料の供給源や機能性食品、化粧品。災害時に大活躍する、地下水をろ過して飲料水に変えるシステム。環境クリーニングに役立つ工作機械用の浮上油回収装置。農場から山岳地帯、一般家庭まで様々な場所に設置可能な小型風力発電機。エネルギー効率や環境に配慮した技術・製品開発が不可欠な現代、その最先端を行くアイデアが日本の中小企業からこんなにたくさん生まれているとは! 続いて行なわれた商談会で日本企業の説明に熱心に聞き入っていたドイツの企業人も、きっとそう感じていたことでしょう。技術大国ニッポンは、モノづくり大国ドイツと開発面で切磋琢磨し合い、制度面ではエネルギー政策転 換期の真っ只中にいる同国から学ぶことができれば、理想的なのかもしれません。
東京都は、今後もこのセミナーを継続しつつ、海外企業の誘致活動を積極的に展開していく意向だそうです。東京進出を考える外資系企業向け相談窓口「ビ ジネスエントリーポイント」はこちら:www.tokyo-business.jp
平均的なドイツ人男性と並ぶと目線が腰の辺りに来る程度の身長で、ドイツでは大人用の服を買えない。来独当初は相当傷ついたが、今では真っ先に子ども服売り場に向かうほどに。「日本人は子どもっぽく見られる」という定説を逆手に取る賢さも身についた。