ジャパンダイジェスト

都市養蜂プロジェクト

暖かい季節になると、パン屋の店先に多くの蜂が群がっているのを見かけます。なぜ都会の真ん中に、こんなに蜂がいるのかと驚きますが、実はフランクフルトは、「都市養蜂(Stadtimkerei)」というプロジェクトがあるほど、蜂との関係が深い街なのです。

生きた蜂を披露する養蜂スーツを着たハース氏と見学者
ハース氏によるガイドツアーで、現代美術館屋上の巣箱を見学

本誌6月21日発行956号の特集でも取り上げられたこのプロジェクトは、アンドレアス・ヴォルフ氏とフロリアン・ハース氏を中心とした芸術グループ「Finger」によって発足しました。2007年5月、ホームレスシェルター「Weser5」がある教会に、蜂の巣箱を実験的に設置。8月までの3カ月間で150キロの蜂蜜を作ることに成功し、翌年からは現代美術館の屋上に巣箱スタンドを移動して、現在に至るまで運営しています。同時にホームレスの人々や精神障がい者の社会復帰支援を行う「Frankfurter Verein」と協力して「混成蜂グループ(Gemischte Bienengruppe)」を形成。ニーダラートに養蜂場を作り、アマチュア養蜂家や失業者など、様々な人たちが都市養蜂に関わるようになりました。2010年以降は市の環境局の協力を得て旧飛行場に拠点を移し、定期的に養蜂ワークショップを開いています。

箱に入った6色のクレヨン
現代美術館の子ども向けワークショップで製作された蜜蝋クレヨン

養蜂に加え、芸術活動や花粉の分析など、社会・環境・芸術と多角的に展開する同プロジェクトですが、その中で私は今回、現代美術館で行われているガイドツアーに参加しました。ツアーはドイツ語のみですが、発起人のハース氏自らが蜂の生態や都市養蜂について詳しく紹介してくれます。巣箱の見学では、まるで芸術作品のように六角形が整然と並ぶ様子が印象的でした。子ども向けのツアーでは、蜂蜜の試食や蜜蝋を使った工作教室もあるのだとか。また、年に1回「蜂蜜朝食会」と題し、その年に採れた蜂蜜の試食会も行われています。 

さらに、旧飛行場に新設された蜂博物館は「蜂のための展示」をコンセプトに、蜂が訪れることを想定した作りになっています。私が訪れた際には蜜蝋を使った作品が並び、発起人のヴォルフ氏に直接質問することができました。ここでも蜜蝋を使った工作教室が開かれるそうで、プロジェクトは今後さらなる広がりを見せてくれそうです。

養蜂を軸に様々な試みを行っている都市養蜂プロジェクト。今後の活動にも注目していきたいと思います。

● 現代美術館 Museum für moderne Kunst大人向けガイドツアー:
8月21日、9月18日 19:00~20:00
子ども向けワークショップ(6~10歳):
8月31日、9月7日、28日 10:00~13:00(要予約)
蜂蜜朝食会:
8月17日 11:00~(要予約)
www.mmk-frankfurt.de

● 蜂博物館
Am Burghof 55, 60437 Frankfurt
8月18、25日、9月15、22、29日
12:00~16:00

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。
 
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