ジャパンダイジェスト

負の遺産から緑のオアシスへ ブンカーがリニューアルオープン!

「ブンカー」(Bunker)と呼ばれる防空壕が、今もドイツ各地に残っています。ハンブルクにもいくつかあり、その形を残しつつ、何らかの目的を持って改築され、全く新しい使命を持って生まれ変わっています。

ブンカーの頂上まで続く外階段ブンカーの頂上まで続く外階段

ハンブルクのサッカーチームFCザンクトパウリの練習場がある、繁華街サンクトパウリ地区。ここにも高さ約40メートルのブンカーがあります。ブンカーの前は広場になっていて、ここで移動遊園地が定期的に開かれています。突然目の前に現れる巨大な灰色のコンクリートの塊に、通りかかった人々はぎょっとするか、不思議に思うかもしれません。しかし、その歴史はあまり知られていないのではないでしょうか。

このブンカーは、1942~1944年にわたり、多くの強制労働者の犠牲によって建てられました。ナチスの防衛力の宣伝目的もあったようですが、実際、2万5000人余りがこのブンカーによって空襲から守られました。戦後、ナチスの生んだ負の遺産であるブンカーは、連合国によって爆破されるはずでしたが、破壊に伴う危険性が高いことから実現されませんでした。そして戦後の住宅難、爆撃で家を失った人々が溢れるなか、仮住宅として使用されるように。さらに数年後、アクセル· シュプリンガー出版社がブンカーの中に事務所を構え、北ドイツ放送局(NDR)も、このブンカーから初めてニュースを放送しました。90年代以降、メデイア会社や広告会社、アトリエ、ギャラリー、メディアスクールなどとしても使用されるように。外観は変わらなくても、「メディアブンカー」として、クリエイティブな人々が集まるスポットとなっていったのです。

当時のブンカーの歴史が展示されているフロア当時のブンカーの歴史が展示されているフロア

そして昨年の夏、「灰色のブンカー」が「緑のブンカー」へと大変身を遂げました。屋根の上に新しく5階建てのスペースが建てられ、ホテルやレストラン、スポーツや文化施設、イベント会場などがオープン。外壁には、屋上まで続く外階段を設置し、訪問者はエレべーターを使わず、その階段を上って屋上まで行くことができるようになりました。所々に木々や植物が植えられた階段を、港やハンブルクの街並みを眺めながら上り、息を切らせながら着いた屋上は緑に囲まれた公園です。都会の喧けんそう騒から離れ、一息つくのにはうってつけの場所となっています。

繁華街にそびえるブンカー繁華街にそびえるブンカー

私が訪れたのはオープン直後だったので、まだ木々もまだらで物足りなさを感じましたが、将来的には、もっと緑が茂った自然公園になる予定だそうです。外階段は、冬の期間は安全のために閉めていますが、今夏には「緑のブンカー」として、人々を楽しませてくれるでしょう。さらにブンカーの中には、その歴史を辿る展示が設置されているフロアがあり、訪問者に歴史的な一面を伝えています。古い建物を再利用するエコな発想だけでなく、負の遺産を後世に伝えていくための記念碑的な使命も忘れない姿勢は、とても大事だと思いました。

岡本 黄子 おかもと きこ
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。

 
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