ジャパンダイジェスト

会場全体でハレルヤコーラス

ドイツでは、どのキリスト教会でも音楽をとても大切にしています。そのため、ほとんどの場合、教会付きの聖歌隊があり、大きな教会では、教会付きのオーケストラを有しているところもあります。そして、季節により様々なコンサートが行われています。クリスマス時期ですと、なんと言ってもJ.S.バッハの曲、「クリスマス・オラトリオ」が有名で、毎年多くの教会で演奏されています。ドイツ人の中には、「これを聴かないとクリスマスが来た感じがしない」と言う人もいるのではないでしょうか。

キリスト生誕図
教会内に飾られたキリスト生誕図(東洋的顔立ちです)

さて、ドイツではアドヴェント(クリスマス前の4週間)に始まり、1月6日(東方の賢者がキリストを来訪したとされる日)まで、クリスマス期間が長く続きます。日本人にとっては、お正月を過ぎてもクリスマス・ツリーが飾られているのはちょっと変な感覚ですが、クリスマスの喜びを一過性のものにするのではなく、長く味わいたいということなのでしょう。

そういう気持ちを表してか、ハンブルクの中央教会の一つ、聖ミヒャエリス教会では毎年、12月25日から1月1日までの毎日、午後6時から「キリスト生誕音楽礼拝」が行われています。1時間15分くらいの礼拝なのですが、ソリスト(独唱者)と合唱団、オーケストラでの演奏が中心で、まるでコンサートのようです。毎日毎日これだけの演奏を一つの教会で準備するのは大変ですから、ハンブルクに5つある、他の中央教会の合唱団とオーケストラが協力して、日替わりで演奏を担当しています。礼拝なので、入場は無料ですから、毎夕、多くの音楽好きなハンブルク市民が訪れ、会場はいっぱいになります。

演奏者の皆さん
拍手を受ける演奏者の皆さん

中でも圧巻は大みそかです。ここ数年、この日の演目は、ヘンデル作曲「メサイア」からの抜粋と決まっているようで、第2部の「ハレルヤコーラス」までが演奏されます。「メサイア」のロンドン初演の際には、「ハレルヤコーラス」の途中で、国王ジョージ2世が感動して立ち上がったという逸話も残っているほどの名曲です。ハンブルクでは、「ハレルヤコーラス」に入る前に指揮者が会場の観客に向かって振り返り、「皆さん立ち上がって、歌える人は一緒に歌いましょう」との呼びかけがありました。すると会場のあちらこちらから、しかも様々な声部で歌っている人たちがいるではありませんか! 教会全体がハレルヤコーラスに包まれているようで、とても感動的な瞬間でした。ドイツでもクラシック離れは進んでいると言われますが、こうしたシーンを目の当たりにすると、それでもまだまだ音楽の層は厚いのだと感じました。

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?

 
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