ジャパンダイジェスト

マルタ・ヘアフォルド博物館で リサイクリングデザイン賞

ハノーファーから西へ列車で1時間ほど行ったところにあるマルタ・ヘアフォルド博物館で、このほど第10回リサイクリングデザイン賞の授与式が行われました。36の作品が選ばれ、10月23日(日)まで同館で展示されています。コロナ禍を受け、使用済み医療用マスクを材料とした作品が複数あるなど、時代を反映させた結果でした。

「STREETWARE」の古着によるアート「STREETWARE」の古着によるアート

このリサイクリングデザインのコンテストは、持続可能性と資源保全の観点からリサイクルやアップサイクル(不用品を質と環境価値の高い製品に生まれ変わらせること)がますます重要視されるなか、17年前から実施されています。これまで世界各国から350人のアーティストやデザイナーが参加し、使い勝手・環境・デザインの3要素を満たすさまざまなアイデアを披露してきました。

今回の一位は医療用マスクを溶かしてそれを原料に作った椅子で、韓国人によるものでした。ほかにも医療用マスクを利用した財布やコートがあり、FFP2マスクを分解して作った歯ブラシもありました。また瓦礫を加工して作った新たな建築資材、ポテトフライの使用済み油による石けん、 壊れた傘の骨から作ったランプなど、個性的な作品が並びます。

なかでも特に印象的だったのは、集めた古着に「STREETWARE」というロゴを縫い付け、新ブランドのように発表しているベルリンのグループで、特別賞を受賞していました。アイデンティティーや消費、製造方法などのテーマについて社会で考えてほしいというもので、使い捨て文化に疑問を投げかけています。資源の問題だけでなく、私たちが社会の一員としてどう生きるか、古着を通して浮き彫りにしていました。

生ゴミを使ったアート生ゴミを使ったアート

同館ではまた、企画展として8月14日(日)まで メキシコ人ペドロ・レイエス(Pedro Reyes)の作品展が開かれていました。核爆弾によるきのこ雲や、ライフルなど武器を材料とした楽器は、人類と戦争について考えさせるものでした。

瓶がずらりと並んだコーナーでは、瓶の中に丸められた小さな紙が入っています。紙に自分の秘密を書いて瓶に入れると、入れた人はほかの瓶から紙を取り出し、ほかの人の秘密を読むことができます。知らない誰かに自分の秘密をこっそり打ち明け、そして誰かの秘密をこっそり読むことができるというスリリングな発想です。ほかにも人形に願いを込めて小物を縫い付けたり、家の模型に人形や家具などを置いたりと、体験型の展示があり、発想の斬新さに驚かされました。

きのこ雲と、ライフルなどの武器を材料とした楽器きのこ雲と、ライフルなどの武器を材料とした楽器

ちなみにこの博物館のあるヘルフォルドという街は、粗大ゴミがほかの都市と比べて少ないそうです。ゴミが少ないのは人々の意識が高いからか、物を大事にするからか、ゴミもアートだからか……。理由は分かりませんが、ともかくこの博物館が気に入りました。

マルタ・ヘアフォルド博物館:https://marta-herford.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。ジャーナリスト、法廷通訳・翻訳士。著書に『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか』『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』、共著に『お手本の国」のウソ』(新潮新書)、『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)など。
 
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