ハノーファー市庁舎そばに位置し、エジプトの遺跡やミイラをはじめ、ドイツのデザインアートなどを展示している、アウグスト・ケストナー博物館で先日、「ファラオの庭でお祭り」というイベントがありました。この日は特別に入場料が1ユーロとなっていたことから、ものすごい混雑。家族連れなどで一日中にぎわいました。
お祭りで一番人気だったのは、古代エジプトのファッションショーです。ファラオやスフィンクスに扮した人たちが舞台を歩き、当時の生活の様子を語りました。高貴な人はカツラをかぶっていた、という説明には会場から大きな反応があり、私も驚きました。
館内には女性と男性のミイラがあり、CTスキャンで内部を検査した様子も一緒に展示されています。なぜミイラを作ったのか。ミイラの意味を知ることは、歴史を理解することでもあり、子供も大人も関心を持って耳を傾けていました。正確な理由は分かっていませんが、死者の復活を願うという説や、死後の世界でもこれまでと同じように暮らせるようになど諸説あるそうです。
一番人気、古代エジプトのファッションショー
見たり聞いたりするだけでなく、実際に工作できるのも、このお祭りの楽しいところです。小さなお椀にエジプトの庭を再現するなど、いろいろな体験ができました。特に3D眼鏡を使って、当時の庭を観るコーナーには長蛇の列。腕輪などアクセサリーを紙でつくることもでき、女の子たちが熱心に取り組んでいました。当時の服を着て化粧ができるコーナーは子供たちに人気で、古代エジプトの文字を書くコーナーでは大人も挑戦していました。
この博物館はハノーファーで最も古く、設立は1889年。名称は、エジプトやギリシャの遺跡をはじめ、様々な古い工芸作品をコレクションしていた、ハノーファー出身の法学者であり、考古学者でもある、アウグスト・ケストナー(1777-1853)に由来します。彼の死後、甥が貴重なコレクションを市に寄付し、このミュージアムが生まれました。3つある市所有のミュージアムの一つです。
エジプト風にお化粧を楽しむ子供たち
建物は1961年に改装され、ガラスとコンクリートを使った立方体の外観になりました。現在は、文化財として保護されており、内部には階段など昔の建物の名残が見られます。
この博物館では、人類6000年の歴史を振り返ることができます。古代のエジプト文化やギリシャ文化をはじめ、食器やソファーなど商業デザインの移り変わり、また古い硬貨のコレクションも見ごたえがあります。2014年からは市内にある歴史博物館、ヘレンハウゼン城ミュージアムとともに「ハノーファー文化歴史ミュージアム」として、市民に親しまれるようになりました。アウグスト・ケストナー生誕240年に当たる今年、同博物館を訪れてみてはいかがですか?
アウグスト・ケストナー博物館: www.kestner-museum.de
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。