「食」は私たちの生活の基礎となる行為ですが、最近では家族が一緒になって料理することも、食卓を皆で囲んで食べることも、おろそかになっている家庭が少なくありません。そこで「ライプツィヒ市子どもと婦人の支援団体」は、子どもたちに食の大切さを伝えるため、2012年に「子ども食堂(Leipziger Kinder-Erlebnis-Restaurant)」を開設しました。ただ満腹になるためだけに食べるのではなく、子どもたちに調理の楽しさを教えながら、健康に良い食事についても知ってもらおうというのが、この活動の主旨です。
中庭に増設されたキッチンで調理するこどもたち
この食堂には、ライプツィヒ市内全域から幼稚園や小学校の子ども達がバスでやって来て、エプロンを締めて全員で調理をし、一緒に食事を楽しみます。調理に際しては、子どもたちが楽しめるよう様々なプログラムが用意されています。例えば、おとぎ話をテーマにした回では、登場人物のコスチューム作りから始めて、実際に物語の中に出てくるスープなどを作り、全員で食卓を囲んで食べます。中庭にはりんごの木やじゃがいも、ハーブなどが植えられていて、子どもたちは土が付いている状態から、自分で食材を取って料理します。
子ども食堂が位置するライプツィヒの東側は、外国人や社会的弱者が多く住み、問題が多いと言われている地域です。そのような地域において、子どもたちの食をテーマにした活動が行われることは、特に重要な意味を持っています。
ライプツィヒ市子どもと婦人の支援団体は、市の住宅・都市再生課から都市計画助成金を受けながら、長らく空き家となっていた建物を購入し、自分たちの手で改修しました。建物のファサードには華やかなイラストが描かれ、地上階が子ども食堂になっています。誕生日パーティー用に貸し切ることも可能で、地上階だけでなく、1階(日本式の2階)には絵本やゲームが置かれた部屋や、宿泊できる部屋もあります。さらにその上の階では、子どもの数が多く、通常のアパートを借りることができないなどの問題を抱える家族のために、低額の家賃で住居が貸し出されています。
華やかなイラストが描かれた子ども食堂の建物のファサード
社会活動として有意義な子ども食堂のようなプロジェクトの収入は、運営者がそれ単体で生計を立てられるようなものではありません。彼らは上階の住居を貸し出し、その家賃収入で子ども食堂の活動費を捻出しています。長期的な視野に立って社会プロジェクトを運営していくためには、このように安定した運営システムを設定することも重要なのです。
Eisenbahnstraße 130, 04315 Leipzig
www.leipziger-kinderrestaurant.de
福岡県生まれ。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の建築設計事務所に所属し、10年に「ミンクス.アーキテクツ」の活動を開始。11年よりライプツィヒ「日本の家」の共同代表。www.djh-leipzig.de