ドイツ語コースを開いたり、服などの物品を直接支援する以外にも、難民支援にはさまざまな形があります。「ウェルカム・ディナー」は、ベルリン、ハンブルク、ケルン、デュッセルドルフなどドイツ国内のいくつもの都市で難民と市民を繋ぐプロジェクトです。ライプツィヒでも、難民集合施設で働く若い人達が中心となって昨年、立ち上げられました。
テレビで放送されたハンブルクのウェルカム・ディナーの様子
そもそも、難民が収容施設にだけ仮住まいをしていても、実際のライプツィヒ市民との接点はなく、ドイツの生活がどのようなものか知る機会がありません。生まれ育った場所から避難し、これまで未知だった国で友人も知合いもいない状況の中で新しく言語を習い、生活を始めることは容易ではありません。そこで「ウェルカム・ディナー」では、一般市民が新しく移住してきた人達を夕食に招待して、個人的な関係を築くことを目的としています。「難民・移民」という匿名性から抜け出して、それぞれが名前を持つ個人としてドイツ社会に関わるきっかけになればという想いと、さらに自宅での夕食は特に親密な場になるので、お互いにとって忘れられない経験が生まれるのではと期待されています。食事を介することで、会話だけに集中することなくコミュニケーションも楽になります。ドイツでは夕食にどのようなものを好んで食べるのか、一般的な食事がどういうものか、食べながら話すことで言語がつたなくても伝わることが多くあります。一度関係を築いた人達は、定期的に会うようになっている場合が多いようです。
ウェルカム・ディナー・ケルンの様子
各都市のウェブサイトにはオンライン申込書が用意されており、予定日の3〜5日前から申請を受けつけ、近いところに住む人同士を組み合わせる仕組みになっています。言語もドイツ語、英語、アラビア語で書かれているため、大多数の人達に伝わるようになっています。実際にディナーを行ったグループには写真の送付をお願いしていて、ウェブサイトに掲載される写真が増えていくにつれて、輪が広がっていく様子が伝わってきます。このように、基本コンセプトに賛同して実際にディナー招待を行う市民の輪が少しずつ大きくなることで、ドイツに辿り着いた難民・移民を受け入れていく個人レベルの波があちこちで高まっています。
皆さんもお住いの都市で、「ウェルカム・ディナー」を実行されてはいかがですか?
https://welcomedinnerleipzig.org
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de