ジャパンダイジェスト

バイエルンは一味違う!ファッシングにまつわるお話

ファッシング(謝肉祭、カーニバル)は、復活祭前の40日間にわたる断食期間(四旬節)前に行われるキリスト教のお祭りです。日本にいた頃は、カーニバルといえばブラジルの派手なパレードのイメージくらいしか持っていませんでした。そのため、ドイツに来てから初めて、「脂の木曜日(Schmotziger Donnerstag)」にはじまり、「バラの月曜日(Rosen mont ag )」、「ファッシングの火曜日(Fasching Dienstag)」と続き、「灰の水曜日(Aschermittwoch)」へと至る盛大なイベントであることを知りました。ドイツのカーニバルは特にラインラント地方の行事が有名で、男性のネクタイを女性が切ることでウーマン・パワーを示すという風習や、バラの月曜日に行われる大がかりなパレードがあります。

教会の塔も道化師に仮装教会の塔も道化師に仮装

バイエルンでのハイライトは、火曜日。祝日ではありませんが、カトリックが強い土地柄なのでお店によってはお休みのところもあります。ミュンヘン市中心部の大型常設市場であるヴィクトアリエン・マルクトではダンス・パフォーマンスが披露され、旧市街地の歩行者天国は日曜からの3日間、仮装した人々に解放されます。空港近くの街エアディングで行われる仮装パレードも独特。郊外の荒野で眠りについていた邪悪な霊が11月に目覚めて暗い季節をもたらすが、ファッシングの火曜日に太鼓などの大音響で荒野に追い返すことで肥沃な季節が戻ってくる、という伝承がもとになっているそうです。

さて、現代では断食を行う人はあまりいませんが、その前のご馳走の習慣はしっかり残っています。特に、クラップフェン(ドイツのほかの地域では、ベルリーナーとも呼ばれている)という揚げドーナツのようなお菓子を食べるのが定番。1年中食べられるアンズジャム入りのスタンダードなタイプに加え、この季節限定のクラップフェンが鮮やかに店頭を彩り、食欲をそそります。お店は大にぎわいで、買い求める人々の列が乱れることも。でも「ファッシングだから良いのよ!」なんて軽口が交される、楽しい雰囲気です。チョコレートやカスタードクリーム入りはもとより、ナッツヌガー、ヌテラ、シャンパン風味、卵のリキュール味、いちご入り、バナナ風味、黒い森のケーキ風などなど。全部試したい! とはいえボリュームがかなりあるので、一つでお腹がいっぱいになってしまうのが残念です。なお、ドイツ以外のキリスト教国でもこの時期にパンケーキなどを食べる習慣があり、四旬節前に乳製品や卵を食べ納める風習が起源のようです。

目にも美しい、ファッシングのクラップフェン目にも美しい、ファッシングのクラップフェン

そして、灰の水曜日はお魚の日。日本に比べれば種類は限られますが、この日は魚メニューを提供するレストランが多いのでうれしいですね。また、ファッシングの翌日の二日酔いや浪費後の空っぽの財布をからかうという伝統的な冗談が飛び交うのもご愛嬌です。

Yoshie Utsumi
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。

 
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