ドイツに住んでいて、「ルートヴィヒ2世」の名前を聞いたことがないという人は少ないのではないでしょうか。彼が建てたロマンチックなノイシュヴァンシュタイン(新白鳥)城は、あまりにも有名です。この王様、ほかにも様々なお城を建築していますが、若かりし頃に造った最初の館は、意外と知られていないかもしれません。
王家の人々に愛された風光明媚な町、ガルミッシュ・パルテンキルヒェン(Garmisch Partenkirchen)に程近いシャッヒェン(Schachen)と呼ばれる山の中に、その館「Königshaus auf dem Schachen」はあります。「狩猟館(Jagdschloss/Jagdhaus)」とも呼ばれますが、孤独と静謐を愛していたルートヴィヒ2世が狩りをすることはなく、もともとは自分の誕生日(8月25日)をお気に入りの友人達と祝うために建てられました。実際に使用したのは2回のみだったそうですが、かの音楽家ワーグナーも誕生日パーティーに招かれたとか。現在はここで、毎年8月25日の11時から王を偲ぶ特別ミサが開催されています。
狩猟館の外観。シンプルな装飾です
この館へ行く道には、ケーブルカーもリフトもありません。ガルミッシュ・パルテンキルヒェンかエルマウ(Elmau)から標高1866m に建つ館までの山道を約3時間掛け、歩いて登らなければいけないのです。この館があまり知られていない理由は、その道程の大変さにあるのかもしれません。道はきちんと整備されていますが、舗装はされていません。登る覚悟で行く方は、丈夫な靴を履いて出発しましょう! 場所によっては険しい道もありますが、1500m を超える頃にはアルプスの山々を背にした美しいバイエルンの景色を眺めることができます。雄大な景色を眺めながらハイキングをするだけでも充分楽しめますが、メインは狩猟館の見学です。
館の内部を見学するには、入場時間指定のチケット(4.50ユーロ)が必要です。2012年の開館期間は10月7日までで、時間は11時、13時、14時、15時。毎回30人限定です。日によっては、もう少し頻繁に入場できることもあるようですが、念のため早めに到着されることをお勧めします。待ち時間があったら、近くの東屋(Aussichtspavillon) や高原植物を集めた庭(Alpengarten)を見学し、いよいよ入館です。建物自体は比較的小さく、中へ入ってまず目にするのが居間や書斎、寝室など。どれもシンプルな内装で、あのルートヴィヒ2世にしては、かなり地味だなと感じられるほどです。若い頃の建築で、あまり予算がなかったのかもしれないなどと思いながら2階に上がると、そこには……!
この先はぜひ、ご自身の目でご覧くださいませ。きっと「苦労して山道を登った甲斐があった!」と思えますよ。
www.schloesser.bayern.de/deutsch/schloss/objekte/schachen.htm
絶景を眺めながら、山道を登ります
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。