ジャパンダイジェスト

中央駅改造計画「Stuttgart21」の現在

10年以上前にもニュースダイジェストの記事で紹介したことがある、シュトゥットガルトの新しい駅プロジェクト「Stuttgart21」。当時ドイツ全土から注目されるほど、賛成派と反対派が激しく対立していました。

デモなどで400人ほどが怪我をする事態が発生するなどし、物議を醸していましたが、強い反対を押し切って2010年2月に正式に工事をスタートをさせたのでした。一方、完成予定を延ばしに延ばして、今現在は2021年の完成を目指しているそうです。10年以上にもおよぶ大掛かりな工程のようですが、一体どこまで進んでいるのか気になるところ……。ある日曜日の午後、駅周辺の工事現場へ足を運んでみることにしました。

新しい駅は完全に地下化するという計画なので、工事の大半は地下で進行しています。中央駅の地上部分とUバーン・Sバーンが走る地下部分とが繋がる連絡橋の上に、工事現場をのぞくための窓が設けられていて、誰でも新しい駅の出来具合を見ることができます。また、連絡橋の内側には世界各地にある変わった駅や建築の写真、近未来の電車の設計図などが飾られ、一種のギャラリー的な役割を果たしています。通り過ぎる人々に駅の完成を楽しみにしてもらうための工夫なのでしょう。駅から出て右に行くと、大きな建物が見えてきます。正面から柵で囲まれているものの、普段と変わらない様子。ところが一本裏の路地に入ってみると、すごい光景が目に飛び込んできました。なんと、この巨大な建物は何本かの脚に支えられているだけで、まるで宙に浮いているかと思うほどです。説明パネルを読んで分かったのですが、この建物は歴史的建造物で、ちょうど新しく建設する線路の真上に位置しています。しかし、市は建物の解体を拒否し、5000万ユーロの費用をかけて最新の技術を駆使しながら建物を浮かせ、トンネル工事をその下で行うという斬新なやり方に出たのです。建物の総重量は1万7000トン。なんともスケールの大きい話ですが、大変なのはこれだけではありません。その足場の地下では地下鉄12号線が毎日走っているそう。現場の担当者はあるインタビューで「私たちにとって、毎日がチャレンジです」と語っており、緊張感が伝わってきます。これからもその進行を見守っていこうと思います。

宙に浮く歴史的建物。路線の地下トンネルを通す予定
宙に浮く歴史的建物。路線の地下トンネルを通す予定

新しいトンネルの工事現場
新しいトンネルの工事現場

連絡橋から見える風景
連絡橋から見える風景。きのこのような柱が建てられ始めていました

実はシュトゥットガルト中央駅及び周辺7つの場所で、「Stuttgart21」工事現場のツアーが開催されています。要事前予約で有料ですが、かなりの人気ぶり。興味のある方は、ぜひ出かけてみてください。

www.s21erleben.de

郭 映南(かく えいなん)
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com

 
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