ジャパンダイジェスト

「Stuttgart21」建設現場のオープンデー

久しぶりにシュトゥットガルト中央駅の建物を通ると、すべての施設や店が移転して無くなっていることに気づきました。連絡橋ののぞき窓から、日に日に大きなキノコのようなコンクリートの支柱が増えてきているのを見て、ついに駅前の都市開発プロジェクト「Stuttgart21」の完成が迫ってきているのかな、と気になっていました。

トンネル工事の説明パネルトンネル工事の説明パネル

そんな私の好奇心に応えるかのように、1月3日から5日まで、長さ600メートルのStuttgart21の建設現場の舞台裏が無料で一般公開されました。そこではさまざまな最新の建設技術とエンジニアリングが見学でき、ちょうど新年の休みと重なって多くの人々が足を運んでいました。シュトゥットガルト・ウルム鉄道プロジェクト協会によると、3日間で合わせて6万4000人余りの訪問者が建設現場を訪れたそう。人々の関心の高さを物語っていますね。

工事中のトンネル工事中のトンネル

本誌1095号でも触れていたように、歴史的建造物を数本の柱によって宙に浮かせており、その下にある巨大なトンネルに入れたほか、将来的に駅ホームになるであろうエリアに入ることもできました。現場では巨大なコンクリートの建造物を造るための型や土台、足場などもそのまま見せているので、その複雑な造りが垣間見えて、わくわくドキドキな体験でした。

プラットフォームの完成予想図プラットフォームの完成予想図

また驚かされたのは、建設現場をイベント会場のように開放するという斬新な発想です。巨大トンネルでは若者による音楽のライブ演奏があったり、グリューワインやホットドックを提供する屋台も完備。混み合いの激しいところでは誘導もあり、スムーズかつできるだけ快適に見学させる開催側の努力が見られました。ほかにも、ミニ重機の試し運転やさまざまなゲームが用意され、子どもを退屈させないための工夫もいっぱい施されています。

また、公開の目玉の1つが、地下水の制御技術。シュトゥットガルトは地下水が豊富で、地下工事の際にはこの水を管理する必要があります。今のところ、七十数カ所にシャフトを打ち込み、施設から送り込んだ水圧により、地下水のレベルを制御しています。完成後も駅周辺ではこの仕組みを稼働させ続けなければいけないそうで、建設費は2018年の時点ですでに82億ユーロに達する予想。さらにランニングコストを足すと天文学的数字になっていくことが容易に想像できます。

将来プラットフォームになる場所将来プラットフォームになる場所

実はこの駅の建設現場で行われる見学ツアーは、近年シュトゥットガルト観光の目玉になっているそうです。メルセデス・ベンツ博物館、ポルシェ博物館とカンシュタッター・フォルクスフェスト、クリスマスマーケットに次いで、Stuttgart21の建設現場は延べ17万人の観光客を招き、そのうち3分の1が海外からの見学者だそう。実に面白い展開ですね。完成は、2021年の予定。新しい駅ができるのを、楽しみに待ちたいと思います。

郭 映南(かく えいなん)
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
Instagram : @einankaku

 
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