ジャパンダイジェスト

歴史あるケーブルカーで 森林墓地へ出かける夏

夏といえばお盆、お盆といえばお墓参りですね。子どもの頃、夏休みは両親の故郷へ帰ってお墓参りをしたものです。そのころは特になんとも思っていませんでしたが、今ではコロナ禍も相まってなかなかお墓参りにいけないので、懐かしく思うことが増えました。

ドイツには森林墓地(Waldfriedhof)と呼ばれる墓地があるのをご存知でしょうか? その名の通り、この墓地があるのは森林の中。ここシュトゥットガルトの森林墓地も、手入れの行き届いた敷地内が地元の人々の散歩道としても人気で、墓地というイメージを感じさせない雰囲気です。

チークワゴンへ乗り込めば、タイムトリップを楽しめますチークワゴンへ乗り込めば、タイムトリップを楽しめます

さらにこの墓地が特別であるのは、今は亡きシュトゥットガルトゆかりの大物たちが眠っているからでもあります。例えば、初代ドイツ連邦大統領のテオドール・ホイスや、電動機器でおなじみのボッシュの創業者ロバート・ボッシュ、シュトゥットガルト中央駅の建築家として有名なパウル・ボナッツ。また芸術家のオスカー・シュレンマーや、オットー・ヘアバート・ハジェクのお墓を訪れることができます。

また墓地内には、建築家のパウル・ボーナッツやシュトゥットガルトの彫刻家フリッツ・フォン・グラベニッツが建てた、第一次世界大戦で亡くなった人々のための記念碑があります。ほかにも第二次世界大戦中の1943~1945年の間に空襲で命を落とした合計482人の民間空中戦の犠牲者が埋葬されている区画もあり、白い墓石が並ぶ様子には、戦争がいかに簡単に人の命を奪うかということを改めて考えさせられました。

もう1台のワゴンとすれ違う瞬間はわくわく!もう1台のワゴンとすれ違う瞬間はわくわく!

さて、そんな森林墓地を訪れる手段としてぜひ使っていただきたいのが、ズュートハイマープラッツから発車しているケーブルカーです。1929年に開通し、自動制御を備えたドイツで初めてのケーブルカーで、チーク材で造られた味のある車両が魅力です。車掌はボタンを一つ押すだけでケーブルカーを出発させることができ、それ以外は全て自動。標高約550メートルの森林墓地までの急な斜面を、情緒深い音をさせながらゆっくりと、しかし力強く約4分かけて登ります。

麓(ふもと)と頂上を行き来する二つのワゴンは、長いスチールケーブルで相互に接続され、中間地点で線路は一時的に二つになります。ここで二つのワゴンがすれ違うのですが、この時のわくわく感は、別車両に乗っている乗客の楽しそうな表情を見るとさらに高まりますよ。

森林墓地内のロバート・ボッシュのお墓森林墓地内のロバート・ボッシュのお墓

ちなみに、このケーブルカーは森林墓地を訪問する人々に使用されていることから、「相続泥棒特急」(Erbschleicherexpress)という穏やかではないユニークなニックネームが付けられています。高山ではなく、州都シュトゥットガルトでこのような移動手段を体験できることはとても貴重で、電車愛好家ならずとも楽しめること間違いなし。1920年代当時からそのままの内装が残るこのワゴンに乗り込めば、誰もがきっと古き時代に思いを馳せることでしょう。

フンドハウゼン エリ
大阪生まれ、東京育ち。2007年末よりシュトゥットガルト在住。Merz Akademie大学視覚コミュニケーション科卒。語学力を武器に、日本企業のリロケーションをサポートしながら、メディアデザイナーとしても幅広く活躍している。趣味はギターと読書。

 
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