シュトゥットガルトの中心地から10キロほど離れた街エスリンゲンの旧市街にドイツ最古のスパークリングワインの製造所があると聞き、先日その見学・試飲ツアーに行ってきました。
醸造所の住所はマルクトプラッツ21番地、まさに旧市街のど真ん中にあります。19世紀初頭、創始者のゲオルク・クリスティアン・フォン・ケスラーはフランス・シャンパーニュ地方のランスにあるシャンパン醸造所で20年ほど修行を積み、1826年にエスリンゲンでドイツ初のゼクト(スパークリングワイン)醸造所を開きました。その3年後にはロシア、英国、米国への輸出を開始し、当時の貴族や皇族に愛飲されるようになったそうです。
186年の歴史を誇るケスラー醸造所
ガイドさんに率いられ、まずはゼクトの醸造工程を見学。その工程を簡単に説明しますと、まずゼクト用のベースワインをブレンドし、これに砂糖と炭酸を生み出す酵母を加えます。その後、瓶内二次発酵を行い、封かんした状態で9カ月以上熟成させたら、逆さまに立てた瓶の口を軽く凍らせて開封し、酵母と沈殿物を飛ばします。最後に瓶にコルクで打栓し、針金付きの金具でとめてラベルを貼ったら、いよいよ出荷です。
このツアーのハイライトと言えるのが、地下セラーの見学。ワインと同じく、ゼクトも遮光された静かな場所で寝かせることが大切です。常時一定の温度(13度前後)と湿度(85%)に保たれているセラーには、1000本以上のゼクトがずらり! その広さには圧倒させられます。セラー内の照明は蛍光灯が数本あるのみで、あとはロウソクの光で照らされています。石作りの丸天井とアンティークな古道具、壁に貼られた宣伝用の古いポスターが古き良き時代のヨーロッパを偲ばせ、現役の醸造所であるにもかかわらず、小さな博物館のように見えました。
創業以来、約2世紀にわたり伝統を守り続けてきたケスラー醸造所は、2004年に一度倒産しますが、翌年には最新テクノロジーとモダンなビジネス戦略を導入し、醸造を再開しました。
約1時間のツアー終了後は試飲タイム。1杯分はツアー料金(7ユーロ)に含まれています。今や年間約1300万本の販売本数を誇るケスラー。17世紀に建てられた歴史的建造物である醸造所の店内にゆったりと腰掛け、香り高くコクのあるゼクトを味わいながら、至福のひと時を過ごしました。
ケスラー醸造所見学・試飲ツアーは、毎週土曜10:00から30分ごとにスタートします(要予約)。
巨大な地下セラー
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
HP: http://kakueinan.wordpress.com/