コロナワクチンを2回接種しました。夏の旅行の際には「黄色のワクチン手帳」を持参すべきでしょうか? 最近話題となっているデジタル接種証明は、どういう手順で入手できるのでしょうか?
Point
- コロナ制限下での提示・旅行で有用
- 「黄色のワクチン手帳」と同じ役割
- 携帯電話アプリにQRコードで表示
- アプリはCovPass、Corona-Warn、luca
- EU共通のデジタルCOVID証明として有効
- デジタル接種証明は任意、無料
なぜ、ワクチン接種証明が必要?
ホテルのチェックイン、レストランでの食事、旅行先ではその都度、24時間以内の抗原検査(シュネルテスト、本誌1147号を参照)の提示が必要ですが、ワクチン接種完了証明があれば免除されます。
基本は「黄色のワクチン手帳」(Impfausweis、Impfpass)
● お持ちですか?
ドイツ版、内容は国際的に共通
国際保健規則に則ったWHOの国際的共通内容の予防接種手帳で、コロナワクチン接種の記録として重要です。持っていない人はコロナワクチン接種の際に開業医(Praxis)から発行してもらえます。
● 何が記載される?
①ワクチンの種類、②接種の年月日、③ワクチンの製造バッチ番号が印刷されたステッカー、③医師の署名、④医療機関のスタンプ、が記載されます。
● デジタル接種証明のある人にも重要
新型コロナウイルス・ワクチンのデジタル接種証明(以下、デジタル接種証明)を受け取った人でも、黄色のワクチン手帳は大切です。デジタル接種証明のQRコードを読み取る機器が普及するには、ある程度の時間を要します。
デジタル接種証明(digitaler Impfnachweise、Impfpass)
● まずはスマホ用アプリ(App)を入手
デジタル接種証明のアプリは、CovPass-App(a)、Corona-Warn-App(b)、luca-App(c)の3種類です。いずれもAppleストアとGoogle Playストアから、CovPassはHuaweiのApp Galleryからも無料でダウンロードできます。
● CovPass-App (コロナワクチン接種記録アプリ)
ドイツのロベルト・コッホ研究所(RKI)がワクチン接種記録用に開発。アップルの機種ではiOS12以上、アンドロイド機種ではAndroid 6以上の基本ソフト(OS)が必要。
● Corona-Warn-App (CWA、コロナ警告アプリ)
コロナ感染者との接触の可能性を把握するツールとしてRKIが開発、昨年来活躍してきたアプリです。コロナワクチン接種のデジタル証明にも対応しています。
● luca App(コロナ対策アプリ)
レストランへの入店や退出を確認できるアプリとして作成され、ドイツ各州で幅広く用いられています。6月下旬より、コロナワクチン接種証明の機能も加わりました。
表示情報の中身は?
● QRコードで表示
スマートフォン画面のQRコードに、①氏名、②生年月日、③コロナワクチン製剤名とバッチ番号、接種日などが情報として埋め込まれています。スマートフォンを使わない人は、QRコードを印刷すれば証明書として用いることができます。
● 利用の仕方
アプリ画面のQRコードを身分証明書(Personalausweis、ドイツの滞在証明カードやパスポート)と一緒に提示します。読み取り専用アプリ(CovPassCheck)にてワクチン接種完了を確認します。
● 利用の義務はありません
デジタル接種証明は、希望者のみへの対応です。ドイツの65歳以上の半数はスマートフォンを不使用という最近の調査結果(6月3日のDigitaltagのプレスリリース)もあり、そのような方は「黄色のワクチン手帳」を活用すれば問題ありません。
● EUデジタルCOVID証明
(EU Digital COVID Certificate)として
各国機関より正式発行されたQRコードは、アプリ上でも紙にプリントアウトした形でも有効です。欧州連合(EU)内の国境を越える旅行では、「EUゲートウェイ」(域内の異なるデジタル接種証明の相互運用仕様)を介して各国の発行元データベースに接続し、ワクチン接種完了の確認がなされます。● EU域外の国は?
EUデジタルCOVID証明は、スイス、リヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェーなど、EU加盟国以外の参加も予定されています。上記以外の国・地域とも、現在交渉がなされています。
● 回復者(Genesene)は?
感染(PCR陽性)に関する情報、回復者のワクチン接種の情報なども追加される予定です。国によって回復者が必要とする接種回数が異なるため、調整が行われています。
● 個人情報は大丈夫?
デジタル証明書の発行は国ごとに行われ、国をまたいでデータが共有されることはありません(6月2日のJETROビジネス短信)。一方で、偽造に対するセキュリティーへの懸念、個人情報保護の立場からの課題を指摘する声も(6月16日のComputer Bild誌、5月26日のNewsweek日本語版)。
デジタル接種証明の利点は?
● ドイツ国内と欧州域内で有効
ドイツのデジタル接種証明はドイツ国内だけではなく、EUデジタルCOVID証明としても有効です。旅先のホテルやレストラン、24時間以内の抗原検査陰性証明を必要とする施設の利用の際に便利です。
● ホテル、コンサート、美術館や博物館など
「7日間指数」(人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数)が35未満となった地域でも、公共施設、コンサートやスポーツ観戦など、人が多く集まる場所では陰性証明が引き続き必要になることも想定されます。その際も、デジタル接種証明が役立ちます。
どこで入手するの?
● 薬局(Apotheke)で
接種済みを証明する黄色のワクチン手帳、身分証明書(前述)を薬局(Apotheke)に持参します。ただし、全ての薬局が対応しているわけではありません。
● ワクチン接種センターからのQRコード送付
接種センター(Impfzentrum)でワクチン接種を受ける人は、接種センターから「EU」と記載されたQRコード書類を受け取ります。すでに接種が完了している人には、QRコードが自宅宛に郵送されます。それをスキャンしてアプリに取り込みます。
● 接種を受けた開業医から
デジタル接種証明の作成が予定されています。一方で、ワクチン接種に伴う膨大な事務処理と通常の診療業務ですでに手一杯の開業医も多く、議論がなされています。開業医で受けた接種記録の載った「黄色のワクチン手帳」を持って行けば、薬局でもデジタル接種証明とQRコードを受取ることができます。
● 自分でダウンロード、スキャン(ハンブルクのみ)
ハンブルクのワクチン接種センターで接種を受けた人は、専用のウェブサイトからQRコードをダウンロードし、自分でデジタル接種証明をスキャンできます(6月18日のComputer Bild誌)。ワクチン接種の管理システムは州や接種センターで異なっており、ハンブルグ以外の接種センターの場合は対応していないようです(6月19日現在)。
● 手数料は掛かりますか?
ワクチン接種完了者にとって、デジタル接種証明の作成は無料です。
● QRコードの保管は大切に
受取ったQRコードは非常に大切です。ソーシャルネットワークを介して画像を送ったり、メールで転送したりすることは絶対に避けてください。