ドイツに来てから近所の薬局は行ったことがありますが、オンライン薬局は使ったことがありません。オンライン薬局では処方箋も扱ってくれるのでしょうか?街の薬局とオンライン薬局の違いを教えてください。
Point
- ドイツではオンライン薬局の利用が増えている
- 処方箋のいらない一般医薬品が主
- サプリメント、健康グッズの扱いも
- 自宅で注文・決済し希望先へ配送
- E-Rezeptか処方箋(要原本)も可
- 専門疾患のオンライン薬局も
- 違法通販薬局の危険性
ドイツのオンライン薬局とは
医薬品の発送は2004年から
オンライン薬局(Online Apotheke)やインターネット薬局(Internet Apotheke)の正式な名称は「通信販売薬局」(Versandsapothek)です。2004年にドイツ薬事法と薬局法が改正され、通信販売(以下、通販)による医薬品発送ができるようになりました。
62%がオンラインでの購入を経験
ドイツに暮らす人の62%(49歳以下の年齢層では80%近く)が、通販薬局での購入経験があると回答(2021年のBitkom Research)。コロナ禍の影響と公的保険(GKV)患者へのE-Rezept(電子処方箋、デジタル処方箋)の導入、さらに近場に薬局がない地域でのオンライン薬局の利用が増えています。
オンライン薬局のメリット
メリットとしては、①品ぞろえが多い、②一般医薬品(Rezeptfreie Medikamente)の場合は他販売店との価格比較ができる、③自宅配達してくれる、④携帯電話やパソコンから注文できる、⑤匿名性がある(顔を合わせず購入できる)ことが挙げられます(ドイツの消費者センター)。
オンライン薬局のデメリット
デメリットとしては、①配送に日数がかかる場合、急ぎの服薬に間に合わない、②電話や電子メールによるアドバイスをすぐに得られないことがある、③クレーム処理に時間がかかることが指摘されています。
信頼性の高い街中の薬局
緊急薬の臨時調達、薬のカウンセリング(ただし多くはドイツ語)、医薬品の自宅への配達サービス、血圧・血糖測定などの追加サービスも受けられます。過去1年間の薬の購入先を尋ねた調査では、対象者の80%が日常的に従来の街中の薬局(Vor-Ort-Apotheke)を、39%がオンライン薬局を利用していました(2022/2023年のSTATISTAの調査)。
街中薬局で処方箋薬、オンライン薬局で一般医薬品
医師の処方箋が必要な薬(RezeptpflichtigeMedikamente)のほとんどは街中の薬局で直接購入し、処方箋のいらない一般医薬品、サプリメント、健康グッズはオンライン薬局で多く買われています(BITKOMの調査)。オランダの2社がほぼ市場を独占ドイツ国内の1万8400軒の薬局のうち、ウェブサイトを通して本格的に医薬品通販を行っているのは約150軒(ドイツ連邦通信販売薬局協会、2024年のドイツ薬剤師会連合会の報告書)と多いものの、ドイツのオンライン薬局市場はオランダのShop-Apotheke とDoc Morrisの2社がほぼ独占しています(2023年の資料)。
ドイツで認可されていない薬剤は?
ドイツ薬事法により、外国からの医薬品はドイツへの持ち込みが禁止されています。ドイツで認可されていない医薬品は、厳格な基準のもと、例外的に特定の個別患者を対象にのみ輸入することができます。
ドイツのオンライン薬局の利用方法
処方箋を必要としない医薬品(Rezeptfreie Medikamente)
処方箋を必要としない医薬品であれば、通常のオンライン通販サイトと同じように注文できます。ただし医薬品に関しては、法律により返品交換の対象外となっていることに留意してください。
処方箋を必要とする医薬品(Rezeptpflichtige Medikamente)
2024年から公的保険(Krankenkasse)患者への処方箋は、E-Rezept(デジタル処方箋、電子処方箋)の形で発行されています。大手のオンライン薬局では専用のスマートフォン用アプリとE-Rezept付きの健康保険カード(Krankenkassenkarte、Gesundheitskarte)を用いて注文します。電子処方箋のQR コードをメールまたは郵送して注文する場合もあります。
印刷された処方箋の場合
紙の処方箋(例えばプライベート保険の処方箋)での注文では、処方箋の原本を郵送する必要があります。これは、紙の処方箋の薬は「原本」である処方箋を提示した場合にのみ(コピーは不可)、調剤されることが法律で義務付けられているからです。
処方箋薬には割引なし
街中の薬局と同様に、処方箋を必要とする医薬品の価格は法律で固定されています。そのため、処方箋薬の価格割引はありません。オンライン薬局が独自に価格を設定できるのは、処方箋を必要としない一般用医薬品のみです。
冷蔵保存の薬購入は街中の薬局が主
温度に敏感で冷蔵が必要な医薬品は、オンライン薬局と提携している冷蔵車両で配送されることになっていますが、2021年の時点では95%以上の薬剤が街中の薬局から購入されています(ドイツ医薬品試験研究所[DAPI])。
処方箋の有効期限、自己負担額も同じ
オンライン薬局でも、公的保険のE-Rezeptの有効期間は発行日から28日間、プライベート保険の処方箋は3カ月間有効です。法律にて処方薬一つに付き小売価格の10%(自己負担額の最低額は5ユーロ、最高額は10ユーロ)を支払うことが定められています。
信頼できるオンライン薬局の見つけ方
安全ロゴマークは信頼性の目安
オンライン薬局はEUからの安全ロゴマーク(EU-Sicherheitslogo)を取得し、連邦医薬品医療機器研究所(BfArM)のウェブサイトに掲載されています。さらに各オンライン薬局のウェブサイトには責任者の薬剤師の氏名、関連監督機関、関連薬剤師会などが記載されています。
専門領域に特化したオンライン薬局
特定の病気のケアとサポートに重点を置いているオンライン薬局(Fachapotheke.eu)、自然薬専門(Omni-Versandapothekeなど)や、男性の健康分野に特化したオンライン薬局(Spring)、個人的なアドバイス、個別調剤の調合、重篤な慢性疾患患者のサポートを行っている家族経営のオンライン薬局(ABFApotheke)などもあります。
近くの薬局で薬を受け取ることも
近所の薬局を指定して、そこで医薬品を受け取れるオンライン薬局もあります(IhreApotheken.deなど)。同じように、提携しているスーパーマーケットやドラッグストアで薬を受け取ったり、処方箋を直接手渡したりできるピックアップ・ポイントを設けている場合もあります。
違法通販薬局に注意
処方箋が必要な薬にもかかわらず、処方箋なしでオンライン販売をしている業者は違法行為を行っていると考えてよいでしょう。ほかにも、安全性に乏しい本物そっくりの偽造医薬品を販売する、または代金を支払ったにもかかわらず品物が届かないといった報告もあります(2015年のDtsch Arztebl紙)。