肥満
視覚的、自覚的な「太り」ではなく、医学的にみて体脂肪(体重)が多過ぎる場合を指し、大きく皮下脂肪型肥満と内臓型肥満の2つのタイプに分けられます。内臓型肥満は腹部肥満、内臓脂肪型肥満、中心性肥満などとも呼ばれ、メタボリック症候群に関係します。腸を取り囲む腸間膜の脂肪が多いために生じるもので、腹腔内の脂肪細胞から分泌される物質が、糖などの代謝に悪影響を及ぼします。腹部肥満の度合いは腹囲や、ウェストとヒップとの比率によって表されます。一方、皮下脂肪型肥満は、おしりや腰周りの皮下に脂肪がつく肥満で、生活習慣病との関連は薄いとされています。
体脂肪率
体重だけでは筋肉質、脂肪過多、骨太の区別がつかないため体脂肪率を測定することがあります。体脂肪率は腹部のCTやMRIで測定され、男性では15~20%、女性では20~25%が標準です。
メタボリック症候群(metabolisches Syndrom)
通常は内臓型肥満と高血糖(糖尿病)、高血圧、高脂血症(脂質異常症)の2つ以上が合併している状態(表1)を指します。お腹が出ていることを慣用的に「メタボ」と言うことがありますが正しくありません。糖尿病、高血圧、脂質異常症は各々が動脈硬化の危険因子です。これらが重複することで動脈硬化(図1)が促進され、脳心血管障害の危険が高まります。
図1 動脈硬化
へその高さの腹囲(ウェスト周囲径)が男性85cm以上、女性が90cm *以上で、かつ下記の3項目中2項目以上が当てはまる
● 収縮期血圧 130mmHg以上、または拡張期血圧 85mmHg以上
● トリグリセリド 150mg/dl以上、またはHDLコレステロール40mg/dl未満
● 空腹時血糖 110mg/dl以上
* 国際的基準の多くは男性の腹囲を女性より大きく設定している
Body Mass Index (BMI)
身長と体重から算出する肥満の尺度(表2)です。但し、身長と体重が同じであれば体型に関係なくBMIも同じ値になるという弱点もあります。疫学的にみると、BMIが22程度の人が最も長生きします。日本の肥満学会ではBMIが25以上(ドイツでは30以上)を肥満と定義しています。
体重(Kg)と身長(m)より算出
BMI = 体重÷身長2
例、体重70kg、身長170cmの場合:BMI = 70(kg) ÷ 1.7(m) ÷1.7(m) = 24.2
日本高血圧学会の資料を引用・簡略化
インスリン
膵(すい)臓のランゲルハンス氏島という細胞から分泌されるホルモンで、血糖値(血液中の糖の濃度)を下げる作用があります。この作用が不足すると高血糖が生じます(表3)。インスリンは糖代謝だけではなく、ほかにも脂質やタンパク質の代謝など多彩な作用を有しています。インスリンの分泌が低下したり、インスリンの効きが悪くなった場合には耐糖能の異常や糖尿病(Zuckerkrankheit)になります。糖尿病は、インスリンの作用不足により生じる慢性疾患で、長期に渡り、目の網膜や腎臓、末梢神経などの合併症(糖尿病の3大合併症)や脳心血管の障害を来します。
以下のどれかが2回以上確認された場合
● 空腹時血糖が126mg/dl以上
● 随時血糖が200mg/dl以上
● 75g - OGTTで2時間後血糖200mg/dl以上
上記のいづれかが1回でも、下記を伴う場合
● ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上
● 典型的な高血糖症状
日本糖尿病学会の資料を引用・簡略化
尿糖
通常、尿にはブドウ糖は含まれません。血糖値が約180mg/dl以上になると、腎臓でのブドウ糖の再吸収の限界を超え、溢れ出てきたブドウ糖が尿糖として検出されます。つまり、検査で尿糖の陽性反応が出た場合、通常は血糖値が180mg/dlを超えていたことを意味します。
1型糖尿病と2型糖尿病
ランゲルハンス氏島細胞が壊れ、インスリン分泌が極端に低下して生ずる糖尿病が1型糖尿病です。子どもや若年者に比較的急激に発症するタイプで、インスリンによる治療が必要です。一方、インスリン分泌はある程度保たれているものの、臓器におけるインスリンの効きが悪くなって生じるタイプが2型糖尿病です。日本人の糖尿病のほとんどは2型糖尿病に分類されます。欧米人の2型糖尿病患者は肥満者が圧倒的に多いのに対し、日本人では肥満が認められない場合も少なくありません。
運動療法
短期的にはカロリーの消費、長期的には筋肉の増強・維持、心肺機能の改善、自律神経・血管運動神経の機能活性に役立ちます。精神的にも好影響が期待されます。特に骨格筋はブドウ糖からできたグリコーゲンの貯蔵場所として大切で、長期にわたる運動療法により糖尿病患者の血糖コントロールが改善することがわかっています。
食事療法
基本は全体の栄養バランスを考えて、決められた量以上を摂らないということです。この基本をもとに、各々の疾患により、さらに制限や追加が必要な食品群が示されます。ある食物だけを多く摂れば病気が治るということはまずありません。