ジャパンダイジェスト

薬局に行こう - ドイツの薬事情

この春、ドイツに越してきたばかりです。日本から総合感冒薬や、尿酸値を下げる薬を少量は持ってきましたが、今後、ドイツでも同じような薬が手に入るか不安です。

Point

  • 薬は、基本的にすべて薬局で購入します。
  • 処方せんが必要な医薬品と、そうでないものがあります。
  • ドイツではジェネリック医薬品が一般的です。
  • 植物由来の医薬品も多く使用されています。
  • 日本で処方されていた薬を継続したいときは、医師に相談。

薬はすべて薬局(Apotheke)で購入

● 処方せんは医師から
受診した医師から処方せん(Rezept)を受け取り、薬局で治療薬(Medikament)を購入します。公的疾病保険(Krankenkasse)とプライベート疾病保険(Private Krankenversicherung)では、処方せんの様式が異なります。

● ワクチン製剤も薬局で
予防接種のワクチン製剤(Impfstoff)も、基本的には医師から出された処方せんを持って薬局に行き、ワクチンを購入します。その後、購入したワクチンを持参して再び医師を訪れ、接種を受けます。

● ドイツの代替調剤ルール
公的疾病保険に加入している場合は、処方せんに製剤銘柄の指定がない限り、薬局の判断で同じ有効成分・同容量で、より安価な製剤を調剤されます。プライベート疾病保険の加入者の場合は、この限りではありません。

● 薬代の支払いも薬局で
公的疾病保険の場合、薬によっては一定の金額を支払いますが、それ以外の保険で全額カバーされる薬については、お財布を開けることなく、薬を受け取ることができます。プライベート疾病保険の場合は、薬局でいったん薬代の全額を支払い、後日、契約規定に準じた金額が払い戻されます。

処方せんが必要な薬、必要でない薬

● 処方せんの必要な薬(Rezeptpflichtige Medikamente)
医師が病気の治療に用いる医薬品の大半は、処方せんを必要とします。
例: 降圧薬、気管支ぜんそくの薬、尿酸値やコレステロールを下げる薬、抗菌薬、睡眠導入薬など

● 薬局で直接手に入る薬
医師の処方せんがなくても購入できる薬局販売医薬品を、「処方せん不要の薬(Rezeptfreie Medikamente)」または「OTC(Over-The-Counter)医薬品」と呼びます。副作用が少なく、安全性が確認されたものに限り、これに該当します。
例: かぜ薬、痛み止め・熱冷まし、胃腸薬などの薬の一部、モーニングアフターピルなど

● ビタミン剤などの自由販売医薬品
植物由来の医薬品やビタミン誘導体などの強壮剤、健康増進を目的とした商品も、薬局やドラッグストア(Drogerie)で購入できます。シャンプーやボディクリーム、ハーブティー、のどあめなどと一緒に陳列されています。もちろん、処方せんは必要ありません。

ドイツの処方薬の特徴

● ジェネリック医薬品の比率が高い
新薬とジェネリックを含めたドイツの処方薬全体(量的ベース)の75%が、ジェネリック薬(後発医薬品)です。ジェネリック薬が市場に存在する医薬品だけをみると、なんと90%弱がジェネリック薬で占められます(Pro Generika・2014年の資料より)。

ドイツでジェネリック医薬品の占める割合

● 処方せん薬も箱・瓶単位で購入
日本では、必要日数分の薬の量が厳密に分包され、処方されますが、ドイツでは箱や瓶単位で購入します。そのため、多くの処方薬は、以下のように薬数が3種類用意されています。

● パッケージの大きさを表すN1、N2、N3
医薬品のパッケージは、箱の中の薬の錠剤の数によって、N1、N2、N3の3種類に分類表記されます。例えば、抗ヒスタミン薬のジルテック錠(Zyrtec)の場合、N1が20錠、N2が50錠、N3が100錠入りです。同じ薬剤の場合、錠数が多いパッケージほど1錠当たりの価格が低くなるものが少なくありません。慢性疾患で継続的な服薬を必要とする場合は、錠数の多いN3を選ぶと良いでしょう。

ドイツでの薬剤の価格の例

● 植物系医薬品の利用が比較的多い
薬用植物(Heilpflanzen)から作られた薬の種類も多く、風邪、胃腸症状、寝付きの悪さなどに対しては、作用がマイルドで副作用が少ないとされる植物療法(Phytotherapie)の医薬品が好まれます。

日本の薬はドイツでも買える?

● 日本の風邪薬
日本国内の薬局で市販されている総合感冒薬には、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、カフェインなど複数の有効成分が含まれているものが少なくありません。ドイツでも、3〜4種類の有効成分が組み合わさった「Grippostad®」「Wick DayMed®」「Basoplex®」などを薬局で買い求めることができます。

● 外資系製薬会社の薬
外資系製薬会社が開発し、日本で販売されている薬は、多くの場合ドイツでも処方が可能です。医師に薬の名称(または有効成分名)と1剤の容量(ミリグラム数)を提示してください。

● 日本で開発された薬
欧州市場で販売されている薬と、そうでない薬があります。同じ有効成分の薬剤がない場合には、薬理作用が最も近い薬を医師に探してもらいましょう。

ドイツの薬の種類

● 錠剤(Tablette)
糖衣錠(Dragee)やフィルムコーティング錠(Filmtabletten)をよく目にします。

● 発泡錠(Brausetablette)
水に入れると炭酸ガスを発生して、速やかに溶ける錠剤です。ドイツでは熱冷まし、痛み止め、咳止め、ビタミン剤などに用いられています。

● カプセル剤(Kapsel)
表面が硬いハードカプセル(Hartgelatinekapseln)と、液状の薬をゼラチンの皮で包み込んだソフトカプセル(Weichgelatinekapseln)があります。

● シロップ(Sirup)
子ども用の熱冷まし(Ben-u-ron Saft、Nurofen Fiebersaft)、吐き気止め(Vomex A Sirup)などがあります。

● ドライシロップ(Trockensaft)
薬瓶に入った粉末状の薬を、最初に用いるときに水を入れて溶かして服用します。小児用の抗生物質の多くがドライシロップです。

● 外用剤(Salbe)
組成や特徴により、軟膏(Salbe)、クリーム(Creme)、ゲル(Gel)、ローション(Lotion)、スプレー(Spray)に分けられます。一般には、前者3タイプの塗り薬をまとめてSalbeと呼ぶこともあります。

● 目薬(Augentropfen)
点眼薬(Augentropfen)と眼軟膏(Augenpaste)がよく用いられます。

● 吸入薬(Inhalationsmittel)
気管支ぜんそくや気管支炎は、専用の吸入器(Inhalator)を用いて薬を吸入します。ステロイド剤や気管支拡張薬(β2刺激薬)の製剤があります。

● 座薬(Zäpfchen、Suppositorium)
口から薬を飲むことができない、もしくは好ましくない場合に座薬が用いられます。熱冷ましや吐き気止めなどがよく用いられます。

自宅に備えておくべき医薬品

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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