ジャパンダイジェスト

ドイツの疾病保険の特徴 2:プライベート保険

ドイツの健康保険に入る際、公的な保険のほかに、民間の保険への加入も可能と聞きました。自分や家族にとってどちらの保険が適切なのかを判断するため、プライベート保険について教えてください。

Point

  • 適応範囲が法的疾病保険(GKV)よりも幅広い
  • 一定基準以上の収入がある人にとってはGKVより保険料がお得
  • 条件を満たせばGKVからプライベート保険(PKV)への変更が可能
  • 加入時の年齢、病気の有無により、保険料が異なります
  • PKVの場合、扶養家族の保険料については別途、支払う必要があります
  • PKVであっても、契約条件によって保険内容に違いが出てきます
  • PKVからGKVへの変更は容易ではありません

プライベート保険で理解しておくべきこと

● 保険でカバーされる検査項目や治療内容が多い

一般にプライベート保険(Privat Krankenversicherung、PKV)は、法的疾病保険(Gesetzliche Krankenversicherung、GKV)でカバーされる検査項目、処方薬の種類、治療内容よりも幅広いサービスが受けられます。入院の際には一人部屋もしくは二人部屋、または個室が用意され、入院中の診察は教授や部長クラスの医師が直接担当。日本の鉄道に例えると、グリーン車の待遇に似ています。プライベート保険の加入者はPrivatpatient(-tin)と呼ばれます。

ドイツのプライベート保険(PKV)のしくみ

ドイツのプライベート保険(PKV)のしくみ

ドイツの民間保険(PKV)の例

Axa Deutscher Ring
Allianz Inter
Barmenia Mannheimer
Debeka Signal Iduna 他
(ABC順)

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

日本の健康保険のしくみ

日本の健康保険のしくみ

● どこでも診療が受けられる

いずれの開業医の外来でも診察・治療を受けることができます。専門医を受診する場合も、かかりつけ医(ハウスアルツト)からの紹介を必要としません。しかし、病状に合った病院を自分で選び、予約をするのが難しいと感じられる場合は、かかりつけの医療機関に相談しましょう。

● 保険加入時は、告知義務を怠らないように

日本での治療や経過観察の検査をドイツでもスムーズに継続するには、プライベート保険加入時にきちんと告知しておくことが大切です。治療を継続する必要がある慢性疾患を告知し忘れた場合、後でその疾患に関係する検査や治療代が保険でカバーされなかったり、時には保険料が値上がりしたりすることがあります。

● 保険加入者と保険会社の契約が基本

プライベート保険は、加入者とプライベート保険会社、二者の間の契約です。保険でカバーされる診療範囲は契約の内容で多少違ってきます。また、年齢、疾病の有無、慢性病発症のリスクの有無によって保険料金も異なってきます。何でも保険でカバーされるという訳ではないので、高額な検査、特殊な治療を受ける前に、契約しているプライベート保険の会社に、保険でカバーされるかどうか確認しておくことも有用です。

● 診療費支払いについて

外来受診をした場合は開業医から(もしくは診療費の請求を代行で行う機関から)、入院した後は病院から、請求書(Rechnung)が送られてきます。請求書で指定された銀行口座宛に振り込みを行ってください。長期間手続きをし忘れていたり、日本の健康保険と同じで保険組合が支払うものと勘違いして無視していると、督促状(Mahnung)が送られてきて面倒な事態になるので気をつけてください。

● 薬の支払いについて

日本であまり見かけないのが、「診療費の支払いをします」という書類への署名(Unterschrift)です。これは、プライベート保険会社から全額返金がなされない場合にも、受診者がGOÄ(保険診療報酬法)に則って算出される診療費を支払う旨を確認するものです。

● 余計な治療とは言えないまでも

公的保険GKVよりカバーされる検査や治療範囲が広いプライベート保険。日本人は医師からの勧めに対し反論を良しとしない傾向があるためか、言葉の問題による誤解のためか、特に説明もなく本来の訴えと関連のない検査や治療を始められてしまったという経験を聞くことがあります。理解できない内容に関しては即答せず、紙に書いてもらって自宅に戻って考えるのも一つの対応策です。

日本の健康保険とドイツのプライベート保険(PKV)

日本の健康保険 ドイツのプライベート保険
運営母体 保険組合 民間保険会社
加入 皆保険 選択に条件あり
保険料 所得に応じる 公的保険より高い
医療機関 全て 全て
検査 全て 高額検査は場合による
治療薬 全て 通常は制限なし
入院 大部屋・個室 一人もしくは二人の個室
診療費 一部負担あり 一旦、全額を支払う
請求書 なし 請求書あり
保険適応 ほぼ100% 契約対象内のもの

その他の留意点

● 疾病保険カード(保険証)の携帯を

キャッシュカード型の疾病保険カード(Gesundheitskarte、Krankenversicherungskarte)は医療施設を訪れる時だけではなく、いつ必要になるか予想できない外出先や旅行の際も携帯するよう心がけましょう。

● 転居の際はカード情報の更新も忘れずに

薬の処方箋には患者の住所の記載も必要です。ドイツ国内で引越しをした際は、受診先の医療機関で住所が変わったことを受付で伝えてください。公的保険では疾病金庫に、プライベート保険は保険会社に連絡して情報の更新をしてもらってください。

● 診察には事前の予約を

診察を受ける際には、必ず電話で予約を入れるようにしてください。日本の開業医や病院のように来た順番に診察されるわけではないので、予約なしだと長時間待つことになりかねません。また、予約した診察時間は守るようにしましょう。

● 加入している疾病保険で分からないことがあれば

公的保険GKVであれば疾病金庫かかかりつけのハウスアルツトに、プライベート保険であれば加入している保険会社にお問合せください。

疾病保険カードと関係する留意点

  • ● カードか番号をいつも持ち歩きましょう
  • ● ドイツ国外での適応があるか一度確認を
  • ● 住所変更は速やかに連絡を
  • ● 紛失したらすぐに届ける
  • ● 外来受診は必ず電話予約をしてから

プライベート保険への家族の加入について

● 家族の加入は無料ではありません

収入がない配偶者、子供の扶養家族の場合も保険料は別途必要です。そのため、配偶者の片方が公的保険に加入しているという場合もあります。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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