夏は調子が良いのですが、毎年冬になると肌が荒れ、体重が増えて、気分も沈みます。また、目も疲れて暗い夜道の運転も億劫になります。ドイツの冬を乗り切るのには、どのような対策がありますか?
Point
- 流行前にインフルエンザ予防接種を
- 乾燥肌の予防・治療に保湿クリームを
- 太陽光でビタミンD不足を解消
- 「冬季うつ」症状には光療法が効果的
- ウイルス性の感染性胃腸炎が増える季節
- 減る運動量、増える食事量からメタボに注意
インフルエンザ(Influenza)の予防接種
インフルエンザ予防接種ワクチン | ||||||
接種 | 点鼻型 | |||||
生後6ヵ月〜2歳 | ◯ | × | ||||
2〜17歳 | ◯ | ◯ | ||||
18歳以上 | ◯ | × | ||||
妊婦 | ◎ | × | ||||
60歳以上 | ◎ | × | ||||
喘息の小児 | ◯ | × | ||||
アスピリン使用者 | ◯ | × |
● 子供のインフルエンザ予防接種(Impfung)
生後6カ月以降~3歳未満は大人の半量、3歳以上は大人と同量の注射製剤(不活化ワクチン)を用います。2歳〜17歳までは点鼻製剤(生ワクチン)も選ぶことが可能です。
● 大人のインフルエンザ予防注射
大人には注射製剤(不活化ワクチン)が用いられます。米国では大人も利用できる点鼻製剤(生ワクチン)がありますが、ドイツでは効果の面から18歳以上には用いられません。
● 60歳以上は予防接種を推奨
高齢者のインフルエンザは重症化しやすく重篤な合併症も多いため、60歳以上の方には予防接種が推奨されています(ロベルト・コッホ研究所の予防接種委員会/STIKO)。
● 妊婦は予防接種を!
妊婦はウイルス感染にかかりやすいとされ、流行前の予防接種がすすめられています。接種には妊娠第二期以降がより安全と考えられています(前述のSTIKO)。
● 予防接種の効果は?
インフルエンザ予防接種は発症を100%防ぐものではありません。発症する率を減らし、症状の軽減化、合併症の減少、病日数の短縮などの効果が期待できます。
気分が落ち込む冬
● 「冬季うつ」をご存知ですか?
冬時間が始まり朝夕も一段と暗くなると気分が沈みがちになり、人付き合いも億劫に。一人でいると思い悩むのもこの季節です。冬だけの極端な気分の落ち込みは「冬季うつ」(Winterdepression)または「季節性情緒障害」、症状の軽い場合はWinterblueと呼ばれます。
● 過眠・過食・気力低下
気分が沈み、疲労感、物事に悲観的になるのに加え、一般的なうつ病とは逆に「食欲が増し(過食/gesteigerter Appetit)、甘い物(Süßigkeiten)を好む」「いつも眠い(過眠/Hypersomnie)」という特徴があります。変化は徐々に起こり、本人も周囲も気付かないことも。翌年春になると自然に症状は改善します。
● 日照時間の不足が関与
原因として光によって制御されている体内時計物質のメラトニンや、脳の活動に関係するセロトニンの関与が考えられています。強い人工的な光を浴びる光療法(Lichttherapie)によって症状の緩和が得られます。
● 光を浴びて、外出をする
自宅で1万ルクスの強い光を毎日20〜30分浴びられる光療法の照明器具(例えば、Philips社のEnergyLight®)、徐々に照明が明るくなる目覚まし時計(Lichtwecker、Wake-up Clock®)も市販されています。晴れた日は外で太陽光に当たりましょう。
乾燥肌(皮ふ乾燥症)
● 冬に増える乾燥肌
冬が近くなると腕や足の皮ふがカサカサし痒くなってくる人も。乾燥肌(trockene Haut)は「皮ふ乾燥症」「皮ふそう痒症」とも呼ばれます。皮ふを保護している皮脂のバリアが傷付き、皮ふ内の水分含有が減って生じます。空気の乾燥、冷たい外気、入浴や体の洗い過ぎが関与します。
● 乾燥肌の症状
症状は痒み(Jucken)を感じ、乾燥した皮ふはカサカサと光沢を失い、赤みや亀裂を伴なうことも。掻くと皮ふが破壊されてさらに痒くなるという悪循環を生じます。快適な床暖房も1日中素足で過ごすと、乾燥による足指のアカギレ、足底のヒビ割れの誘引となることも。
● 1に保湿、2に洗い過ぎない
入浴後は脂肪含有量の多いクリームで丹念な保湿を行います。シャワーや入浴に際してナイロンタオルやスポンジで必要以上に擦ったり、毎日過度に石鹸やボディシャンプーを使うのはよくありません。入浴やシャワーの回数を減らすだけでも効果があります。
日照時間とビタミンDの欠乏
● ビタミンDは太陽の恵み
太陽の光(紫外線)が皮ふに当たって作られるビタミンD(Vitamin D)は骨(Knochen)を強くするための必須ホルモンです。幾らカルシウムを摂ってもビタミンDが欠乏すると骨に吸収されません。ドイツの長い冬は日照時間が少なくビタミンD不足になりがちです。
● 晴れた日は日光に当たりましょう
ビタミンDの生成には日光浴が一番効果的です。晴れた日は散歩、またはバルコニーで週に2回30分ずつ、もしくは毎日10〜15分間、顔や手の皮ふに直射日光が当たる程度で十分なビタミンDが作られます(日本骨代謝学会)。
● ビタミンDが含まれる食事
シイタケなどきのこ類が紫外線を浴びて出来るビタミンD2、サケやマグロなど魚類に多く含まれるビタミンD3はビタミンDの補給源になります。
人のビタミンDのみなもと | ||||||
太陽光(紫外線) | 皮ふにて生成 | |||||
食品 | きのこ類、油の多い魚類、 卵の黄身、レバー |
夜間の視力低下?
● 夜の運転が怖い
日本からドイツに来て、冬の夜道の運転で視力が落ちたと感じる人は少なくありません。夜が長い冬のドイツ、街中もアウトバーンも外灯照明に乏しく、冬は歩行者が黒っぽい衣服を好むことも見えにくくなる原因です。よく見えないと感じたら速度を落としての運転を心がけましょう。
● 暗闇での色彩判別・動体視力の低下
私達の目の網膜(Netzhaut)には、明所で機能し3色の識別ができる錐体(すいたい)と、暗闇で働き色の違いを区別できない杆体(かんたい)の2種類の視細胞があります。夜道では色彩の識別能が低下します。また、対象が動いている時の動体視力は静止視力より弱く、例えば静止視力が1.2の人の動体視力は時速50km/hで走っている場合には0.7に低下し、暗闇ではさらに顕著です。動体視力は年齢とともに低下します。
ウイルス性の胃腸障害
● 冬に増えるウイルス性胃腸障害
冬になるとウイルスによる感染性胃腸炎(Magen-Darm-Grippe)が流行します。原因としてノロウイルス、ロタウイルス、アストロウイルス、腸管アデノウイルスなどがあります。
● 下痢が止まっても48時間は自宅に
ノロウイルスの便中への排菌は下痢が改善しても1週間以上は続き、新たな感染源になることも。ドイツでは下痢が止まっても少なくとも48時間は子供の再登園・再登校を避けることが勧告されています。
冬はメタボの季節
● 運動量が減り、食事量が増す
夏は野外活動に積極的だった人も、寒くて暗い冬には運動量が減ります。一方、忘年会、クリスマス、新年会、カーニバルとイベントが続くドイツの冬、どうしても摂取カロリー量と消費エネルギー量のバランスが取りにくくなります。
● 血圧、コレストロール値、血糖値の上昇も
そのため、冬の期間は夏に比べ血清コレストロール値が上昇しやすく、寒さもあって血圧も上がりやすくなります。糖尿病患者では血糖コントロールが甘くなることも。注意が必要な季節です。