3月にドイツに来ました。日本では駅前の薬局チェーンで風邪薬を買っていたので、ドイツ語もできない現状では医師に相談するのも億劫です。ドイツでは薬はどこで買えば良いのでしょうか?
Point
- ドイツ語で薬はMedikament
- 風邪薬・熱冷ましは薬局で買えます
- 処方せんが必要な薬は、まず医師を受診
- ドロゲリーでは滋養、健康増進の薬品、ビタミン製剤が購入可能
- 日本での薬の継続には一般名と規格が大切
薬局と薬店(ドロゲリー)
● 薬局 Apotheke
薬剤師(Apotheker/-rin)が常在し、処方せん(Rezept)で出される薬(Rezept-pflichtige Medikamente)と、薬局だけで販売が許可されている(Apothekenpflichtige Medikamente、「薬局販売医薬品」)処方せん不要の一般医薬品(OTC「= Over The Counter」医薬品、Pflichtfreie Medikamente)を扱っています。
ドイツの医薬品の分類と薬局
薬局 | 薬局 | 薬局とドロゲリー |
処方せん必要 | 処方せん必要なし | 処方せん必要なし |
処方せん医薬品 | 薬局のみで販売 | 自由販売の医薬品 |
医師の指示が必要 | 副作用が少ない安全性が高い | 強壮、健康改善、疾病の予防など |
多くの治療薬品 | •解熱鎮痛薬 •風邪薬 •胃腸薬 •植物製剤 など |
•ビタミン誘導体 •ハーブティーなど |
●ドロゲリー(薬店) Drogerie
処方せんの必要がない一般医薬品(OTC医薬品)のうち、薬剤師を必要としない「自由販売医薬品」(Freiverkäufliche Medikamente)のみを扱っています。滋養強壮、健康増進に役立つサプリメント、ビタミン製剤、植物の入ったハーブティーのほか、石鹸、体温計、絆創膏なども置いてあります。DM、Rossmann、Müllerなどのドロゲリーのチェーン店が有名です。
扱われる医薬品の分類
● 処方せんが必要な薬
予防接種ワクチン、きちんとした服薬管理が大切な薬剤(糖尿病治療薬、心臓の治療薬など)、安易に飲むべきではない薬剤(抗菌薬、睡眠導入薬など)、作用の強い薬(大きな容量の解熱鎮痛薬など)、新薬(neue Medikamente)が当てはまります。
●薬局で扱い、処方箋の必要ない薬
それほど作用が強くない、しかも短期間だけ用いるような薬剤、成分の安全性がよく知られている薬剤(風邪薬、低容量の解熱鎮痛薬、花粉症の薬の一部など)は、薬剤師に症状を話し、助言を得て購入することが可能になります。
● 滋養強壮、健康増進、ビタミン剤など
ドロゲリーと薬局では、具体的な効能や明白な治療効果がなく、強壮、健康状態の改善、内蔵器官の機能保全、疾病予防に役立つ医薬品も扱っています。植物由来の医薬品やビタミン誘導体なども含まれます。
薬代の支払い
●公的疾病保険で、処方せんあり
公的疾病保険(義務疾病保険、gesetzliche Krankenversicherung、GKV ※詳細はドイツニュースダイジェスト1049号参照)では、処方せんのある場合の薬代は基本的に無料ですが、規定によって薬局で5〜10ユーロの追加料金(Zuzahlung)の支払いが必要な場合もあります。
● 公的疾病保険で、処方せんなし
処方せんを必要としない薬剤は公的疾病保険の適応外です。12歳未満の子供、発達障害がある18歳までの青少年は例外で、薬代が保険でカバーされます。
●プライベート疾病保険の加入者
民間のプライベート疾病保険(privater Krankenversicherung ※詳細はドイツニュースダイジェスト1051号参照)では、薬剤代を薬局で一旦自分で支払い、それをプライベート保険会社に申請することによって、契約規定に則った金額が本人宛に払い戻されます。
●大切なプライベート疾病保険加入時の申告義務
加入時に申告し忘れた日本からの継続治療の薬、非常に高額の薬剤(例えば、肝炎ウイルス治療薬の開始)については、薬を購入する前に加入しているプライベート疾病保険会社に確認をとるようにしてください。
処方せん医薬品の薬局での追加料金(公的疾病保険)
(2018年1月のドイツの厚生省のパンフレットより)
薬は薬箱ごと保管を
● N1、N2、N3 とは何?
ドイツで購入した薬箱に記されているN1、N2、N3のNは規格(Norm)の意味で、中に入っている錠剤(カプセル剤)のおよその数量を表しています(例えば、降圧薬のカンデサルタン8mgでは、N1が28錠、N2が56錠、N3が98錠入り)。
● 薬の説明書 Beipackzettel
購入した薬箱の中には、小さな文字で記された使用説明書が入っています。説明書の大きさ・形・レイアウトはまちまちですが、すべて次の6項目の内容が順に記載されています。①薬の働きと適応される病気②服用に注意を要する場合③薬の飲み方④生じうる副作用について⑤保存方法⑥成分・会社名。処方した医師か薬局の薬剤師に服用法を教えてもらうことが大切です。
ジェネリック医薬品(Generika)
● 75%以上の高い普及率
ジェネリック薬(後発医薬品)とは、新薬の特許が切れたあとに販売される同じ有効成分、同じ効き目の薬剤です。ドイツの公的疾病保険での処方薬全体の77%がジェネリック薬です(Pro Generika 2017年の資料より)。目にすることの多い1A、AL、CT、Ratiopharm、Hexalなどのは代表的なジェネリック医薬品メーカー。
● 薬局が処方せんの医薬品を選べる
公的疾病保険の処方せんの場合、薬局に同じ有効成分でより安価なジェネリック製剤があれば、薬局でそちらを調剤することができます。この仕組みは「代替調剤ルール(Aut-idem-Regel)」と呼ばれており、ドイツのジェネリック薬の普及と医療費節減に役立っています。
植物製剤の普及
● 薬用植物からの薬
薬用植物(薬草、Heilpflanzen)からつくられた「薬」を、病気の予防や治療に用いることを植物療法(フィトテラピー、Phytotherapie)と呼びます。ドイツでは薬事法(Arzneimittelgesetz、AMG)の基準に則って製造された植物製剤の錠剤やカプセル剤が広く用いられています。
● 効果はマイルド、でも安心の印象
薬用植物の効果は一般にマイルドで、効能として幅広いものが多く、風邪、消化器症状、不眠、メンタル症状、皮ふ病などの領域で好まれて用いられています(PASCOE研究のアンケート結果より)。代表的な植物の作用と治療領域については、ドイツニュースダイジェスト928号をご参照ください。
● 緑色の処方せん grünes Rezept
植物製剤の多くは本来は処方せんを必要としない一般医薬品として扱われるため、公的疾病保険の適応外です。しかし、医師が口頭で植物製剤をすすめても薬局では何の薬剤を示しているか分からないことが多く、その際に用いられるのが「緑色の処方せん」です(疾病保険適応となる通常の処方せんは赤色)。
日本からの治療薬を継続する
● 薬剤の「一般名」と「規格(mg)」が大切
各々の薬には「商品名」と「一般名(有効成分名)」があります。世界的に販売されている薬でも国によって商品名が異なることも多いので、薬の検索には一般名が重要です。日欧では同じ薬剤でも1錠に含まれる容量が異なっていることも多く、日本での治療で用いられていた薬剤の規格(容量)も大切です。
● 同じ薬を入手できない時
日本の製薬企業が開発し国内だけで販売している新しい薬の中には、欧州市場では入手できないものも数多くあります。全く同じ有効成分の薬がドイツで入手できない場合には、作用と効果が非常に似ている代替の治療薬を探すことになります。