大地の恵み、溶岩のような黒ビール
ドイツ中部に位置するテューリンゲン州。北はハルツ山地から南はテューリンガーの森とフランケンの森まで、雄大な自然に囲まれている。盆地は肥沃な農業地帯で、麦やブドウの栽培が盛んだ。
ディングスレーベン村にある「メッツラー醸造所」は麦畑に囲まれた醸造所。風が吹くたびに黄金色に波打つ麦畑の美しさに心が浮き立つ。醸造所では主に近隣で収穫された麦をビールに使用している。ビールが日本語で「麦酒」と表記する通り、ビール造りにとって良質な麦は欠かせない。
醸造所は1895年にアウグスト・メッツラー氏によって設立された。第二次世界大戦後は東ドイツに組み込まれたが、再統一後はメッツラー家によって管理され、現在も個人醸造所として運営。
「Dingslebener Lava」は、醸造所100周年を記念して開発された黒ビールだ。「Lava」はドイツ語で「溶岩」の意味。周囲の山々は大部分が火山性の斑岩から成り、その溶岩層を通った地下水が醸造に使用されていることと、ビールの外観が溶岩のように真っ黒であることから名付けられた。
ビールの色は使用される麦芽に由来する。麦芽は発芽途中の麦を高温で乾燥、焙煎させて成長を止めたもので、焙煎温度が高いほどその色は黒に近づく。ビールは淡い色の麦芽をベースに、数種類の麦芽を組み合わせて造られる。濃色の麦芽を少量加えるだけで黒ビールになるのだ。麦芽はさらに、ビールに穀物のうまみやほろ苦さをもたらす。
「Lava」は、コーヒーやカカオのような香ばしさを感じさせつつも、ラガー製法によるすっきりとした飲み口が特徴。麦芽のロースト香は、同じく焦げ感のあるグリル料理に合わせやすい。コーヒーのようなビターなニュアンスは、バニラアイスやチョコレートケーキなどのスイーツとも好相性。ご自宅でビールと料理のマリアージュを楽しんでみては。