ジャパンダイジェスト

ワインと食の合わせ方7 和食に向く頼もしいワイン

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日本人の食習慣はとても大らかでオープンです。日本独自の食文化を維持しながらも、世界各地のあらゆる食材や料理法を自在に取り込み、アレンジしてしまいます。食事の流れも、先にお惣菜を味わい、最後にご飯と汁物で締めくくることもあれば、お惣菜と汁物とご飯を交互に食べることもあります。

お酒の楽しみ方も大らかです。アペリティフのように楽しむビールに始まり、季節により冷酒か熱燗へ、あるいはワインへと進む方もいれば、焼酎の水割りを好む方もいますし、食事によってはウイスキーやハイボールを好む方もおられるでしょう。

洋食では、スープ、前菜、メインと料理を一つずつ順番にいただきます。ワインを合わせる場合は、1皿の料理と1種類のワインを対にして、組み合わせを楽しみます。和食をワインと合わせる場合も、コース仕立てにすると、ワインが選びやすくなります。例えば、酢の物などの前菜にゼクト、茶碗蒸しにシャルドネ、寿司にリースリング、牛のタタキにシュペートブルグンダーといった風に組み合わせます。

とはいえ、普段の食事では、色々な料理を行き来しながら味わうことが多いので、大抵の料理と合うワインが理想的です。そのような頼もしいワインとは、どんなワインでしょう?

日本の食中酒としてポピュラーなビールと日本酒は、それぞれに奥の深いお酒で、ビールはホップ由来のハーブ系のほろ苦さ、日本酒は透明感あふれる清らかな味わいが、日本人の食事になじみ、愛されているのだと思います。よく地元の食事には地元の酒が合うといいますが、和食には日本のビールや日本酒など、日本の酒が良く合い、日本のワインも好相性です。中でも軽快で、抑制された上品な風味を持つ甲州には、日本酒のニュアンスが感じられるものがあり、和食に向くワインです。

ドイツワインには和食との相性が良いものが多いです。スパークリングワインなら、ブルグンダー系品種を使用したゼクトかパールワイン、白ワインならヴァイスブルグンダー、オクセロワ、シャルドネ、 グートエーデル(シャスラ)、ジルヴァーナー、エルプリング、 ミュラー=トゥルガウ、リースリングなど、赤ならシュペートブルグンダー、サン・ローラン(ザンクト・ラウレント)などがおすすめです。いずれも、軽快な仕上がりのグーツワインが合わせやすく、5~10ユーロくらいで品質の良いものが見つかり、日本酒より低アルコールです。

和食にはブレンドワインも良きパートナーとなります。ドイツには、ミュラー=トゥルガウ&リースリング、ヴァイスブルグンダー&シャルドネといった、ドイツらしいキュヴェ(ドイツ語ではブレンドの意)があり、単独品種のワインよりも料理に合わせやすい場合があります。

個人的には、目下、和食とオクセロワ(別名ゲルバー・ブルグンダー)の組み合わせが気に入っています。ドイツではバーデン地方クライヒガウ、上モーゼル地方、プファルツ地方で栽培されているブルゴーニュ系品種で、寿司や刺身、煮物、焼物、揚げ物など大抵の和食に合う包容力のあるワインです。出汁や醤油、味噌はもちろん、しょうが、わさび、柚子胡椒などの薬味ともうまく調和するので重宝します。

 
Weingut Klumpp
クルンプ醸造所(バーデン地方)

Weingut Klumpp
マルクス(右)、アンドレアス兄弟

1983年にバーデン地方北部ブルッフザールで、ウルリヒ・クルンプ、マリエッタ夫妻が興した醸造所。1996年からビオを実践。2004年からは長男のマルクスが主に醸造を、2010年からは次男アンドレアスが主に栽培を担当しているが、実際には家族全員ですべての仕事を行っている。所有畑は25ヘクタール。主な栽培品種はリースリングとブルグンダー種。このほかサン・ローラン、ブラウフレンキッシュ、シラー、ボルドーの赤品種も栽培している。畑のあるクライヒガウは、6500万年前、オーデンヴァルトとシュヴァルツヴァルトの土壌隆起で形成された盆地で土壌が変化に富む。地域性を生かすこと、家族が一つとなって働くこと、品質第一をモットーとしている。

Weingut Klumpp
Heidelberger Str. 100
76646 Bruchsal/Baden
Tel.07251-16719
www.weingut-klumpp.com


Schäferlay2016 Auxerrois trocken
2016 オクセロワ 辛口 10.50 €
(2016年産は完売、2月半ばに2017年産がリリース予定)

クルンプ家の所有畑で、最も古いのがオクセロワの畑。栽培面積は3ヘクタール弱。樹齢53年の古木はブルッフザールのギプスコイパー(石膏質泥土岩)土壌で、その他はツォイテルンのレスとロームの混合土壌で育つ。オクセロワの原産地はシャブリ近郊で、ホイニッシュとブルグンダー系品種の自然交配種といわれる。房がコンパクトなので、生育期に先端の3分の1をカットして空間をつくり、腐敗を防いでいる。酸の分解が早く、収穫のタイミングは慎重を要する。アプリコットの優しい風味と穏やかな酸味。10%をバリックで仕立てている。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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