ベルリンのロングナイト・イベントというと、年に2回開催される「博物館・美術館の長い夜」がよく知られていますが、ユニークな催し物はほかにもいろいろあります。6月13日に行われたのは、「学術の長い夜(Lange Nacht der Wissenschaf ten)」、副題は「1年でもっとも賢い夜」というものです。
これは、ベルリンとポツダムの総合大学や単科大学、その他の研究機関が日頃取り組んでいる研究内容を一般の人々に紹介し、その世界を実際に体験してもらおうという趣旨のイベントで、9回目となる今年は金曜の17:00から01:00まで、67の研究機関による2000以上ものプログラムが用意されました。大人は12ユーロ、学生は8ユーロでそれらすべてに参加することができ、さらに各会場はシャトルバスで結ばれているくらいですから、これはもう1つのフェスティバルのような存在と言えます。
私が足を運んだのは、ミッテ地区の北側にあるフンボルトハイン。工業デザインの先駆者ペーター・ベーレンスの設計で20世紀初頭に建てられた電気メーカーAEG社の工業ホール内では、そこを本拠地とするベルリン工科大学の土木工学科が、広大なスペースのあちこちにブースを展示していました。
私が会場に着いた時はすでに22:00 を回っていましたが、入り口にはグリルの屋台が並び、中に入ると何より子どもが多いのに驚きました。あちこちから歓声や拍手が聞こえてきて、学術行事ということからイメージする堅苦しさはまったくありませんでした。
飛行船の模型の行く手を見つめる人々
土木の世界に日頃縁のない私にも興味深かったのは、最先端の研究内容を垣間見られたことです。超軽量コンクリートと人口筋肉を用いて揺れを制御する橋の実物大のモデルが物々しく置かれているかと思うと、まったく新しいセンサーシステムで方向をキャッチする飛行船の模型が会場内を飛び回っていました。同大学でスタジアムなどのアダプティブな可動式屋根構造を研究している筆者の友人の増渕基さんは、魚の動態原理を建物の屋根の構造に応用しようと試みる模型の解説をしてくれました。
子ども用の体験プログラムも多数あり、中でもスパゲッティを使って最も美しい風車を作るというコンクールは注目を集めていました。また、AEG社が1895年に欧州大陸で初めて掘ったという実験用の地下鉄トンネルを歩くツアーもこの近辺であったそうです。
「学問は社会の重要な『資源』であるだけでなく、常に刺激的な冒険である」とプログラムの前文に書かれていましたが、まったくその通りだと実感した一夜でした。
スパゲッティで作る風車コンテストの表彰式