新緑がまぶしい季節になりました。ベルリンにもう何年も住んでいながら毎年この時期思うのが、街を彩る緑の豊かさです。リンデン、カエデ、プラタナス、アカシアなどの街路樹は多彩で、目を飽きさせません。少し郊外に出れば広大な森が拡がるベルリンですが、すぐに足を延ばせる場所に緑豊かな公園が多くあるというのもこの街の大きな魅力のひとつです。今回は「都会の中の楽園」とも言えるベルリンの公園の魅力に迫ってみたいと思います。
ベルリンの公園といって多くの人がまず思い浮かべるのは、市のほぼ中心に位置するティーアガルテン(Tiergarten)ではないでしょうか。総面積210ヘクタールは、ミュンヘンの英国庭園に次いでドイツで2番目の広さです。木々がうっそうと生い茂り、場所によっては原生林の趣さえ漂っています。小さな湖やそこに浮かぶ島を横目に見ながら歩いていると、自分が今人口340万人の大都市にいるということを完全に忘れてしまうほどです。
木々がうっそうと茂るティーアガルテン
ベルリンには最初から公園として作られたもの以外に、数奇な運命の末、公園になった特異な場所もあります。クロイツベルク地区のゲルリッツ公園(Goerlitzer Park)は戦前まで、現在のポーランドとの国境に位置する同名の街へ発着する鉄道の駅でした。戦争で大きな被害を受け、さらに戦後、このすぐそばに東西の国境が敷かれ、駅の機能を失った過程で公園になったのです。園内を注意して歩いていると、かつての駅の建物や地下道が遺跡のような姿で残っていることに気付きます。天気のいい日の夕方にこの公園に行ってみると、遊び回る子どもやカップルから、酔っ払い、パンク風の若者、スカーフを頭に巻いたイスラムの女性まで、年齢も国籍もさまざまな人たちが思い思いに過ごしている光景に出会えることでしょう。クロイツベルクの歴史と多文化性を実感できる場所でもあるのです。
かつては駅だったゲルリッツ公園
プレンツラウアーベルクの壁公園(Mauerpark)も戦前は貨物駅だったところで、戦後は敷地内に壁がそびえていたことからこの名前が付きました。斜面の芝生からはテレビ塔などがよく見渡せ、夏になるとバーベキューをしている光景もよく見かけます。またここでの週末の蚤の市はよく知られています。
実は市内のど真ん中には、まだほぼ手付かずの状態で残っている広大な空き地があります。ポツダム広場のすぐ南側、やはり戦前まで駅の敷地だった場所で、ここも数年後には広大な緑地に生まれ変わることが決定しています。
空き地ができたからといってビルを建てるだけが能ではない。ベルリン市の緑に懸ける思いや政策を見ていると、都市にとっての本当の幸福とは何かを考えさせられます。
市民の憩いの場となっている壁公園