白クマの赤ちゃん「クヌート」のブームはもはや世界中に広まった感があります。当連載でも一度はクヌートのことを取り上げたかったのですが、「動物園では最低でも1時間は並ぶというし、かといってベルリンに住んでいながら本物を見ないで書くのもどうかなあ」と思っていたところ、クヌートがどんどん大きくなっているという話をよく耳にするように なり、ついに私は意を決して先日の日曜日、ツォー駅前の動物園に足を運んできました。
予想通り、クヌートのコーナーの前はドイツではめったに見ることのない行列ができていました。実際並んだのは40分ぐらいでしょうか。入り口で2手に分かれ、12歳以下の子供は前列(大人1人の同伴が許されます)、それ以外の人は後列で見ることになります。中に入ると、こちらもすっかり有名になった飼育係のトーマス・デルフラインさんと砂遊びにたわむれるクヌートの姿が目に飛び込んできました。「ここからではちょっと遠いなあ」と思って私は眺めていたのですが、その後、子供がよく見える位置に来てくれたり、逆に後列の大人も近距離で見えるように配慮してくれたりと、約10分の「クヌート・ショー」はまずまず満足できるものでした。クヌートは確かに一回り成長していましたが、デルフラインさんの後を健気に付いて歩く様子を見て、特別にファンというわけでもなかった私でさえメロメロになってしまったことを付け加えておきます。
最初からクヌート目当てで来られた方も、時間を変えて再度同じ場所に出向かれてはいかがでしょう。完全にクヌートの影に隠れてしまいましたが、実はここは普段はヒグマの住処なのです。閉館が迫ってきた夕方、先ほどの喧騒がウソのように静まる中、のんびりくつろぐヒグマの姿を見ながら、私はクヌート・フィーバ ーのすさまじさを逆に実感すること になるのでした。ベルリンはクマの街。サイズは大分異なりますが、こちらも十分かわいいですよ。