初めてベルリンに来る方に「ベルリンでまず見てみたいものは?」と聞いてみると、いまだに少なくない確率で「ベルリンの壁」という答えが返ってくるような気がします。壁の崩壊から18年近くが経っても、「壁の街」というイメージは依然人々の心の中に深く沈殿しているのでしょうか。実際、約30年続いた分断時代は、 ベルリンの人々の生活や街並みに多大な影響を及ぼしたわけですが。
その壁はしかし、今ではもうほとんど残っていません。有名なイーストサイドギャラリーは良くも悪くもすっかり観光地化し、ポツダム広場の近くに比較的長く残る壁は無残にも削り取られてしまいました。それでも壁のあった時代の面影を求める方には、かつての壁に沿って歩いてみることをおすすめしたいと思います。
陸の孤島だった西ベルリンをぐるりと覆っていた「ベルリンの壁」は、実に全長160キロにも及びます。ベルリン市は2001年からその線に沿って遊歩道を整備するプロジェクトを進めてきたのですが、それがこの度完成しました。目印となるのは、全部で約600ある「Mauerweg(壁の道)」のプレートです。また中心部には壁の跡が道路に刻まれていますし、重要な出来事が起こった場所やかつての検問所にはドイツ語と英語の両方で書かれた情報プレートが設置されています。壁の道に沿って歩くといろいろな発見があるものです。ポツダム広場には昔日の面影はもはや何も残っていませんが、東に向かって歩くとそのうち至る所に空き地が顔をのぞかすようになり、分断時代が残したもの の大きさを実感できるでしょう。
通りに刻まれる壁の跡
この全長160キロの壁の道ですが、市内部分は43キロに過ぎず大半は郊外に属します。緑の豊かなベルリンですから、この道は格好のサイクリングコースでもあるわけです。ベルリン市のホームページ(www.berlin.de)には壁の道に沿った14のおすすめコースが空中写真と説明付きで紹介されているので、天気のいい日にそれを プリントアウトして出かけてみるのはどうでしょう。
私もこの夏、自転車に乗って160キロの道をたどってみようかと企んでいます。
Mauerweg のプレート
壁の遺構