ジャパンダイジェスト

古き時代のカフェ文化に誘う「グロス」

ベルリンの西地区を代表するショッピング街、クアフュルステンダム(通称「クーダム」)は、19世紀後半、時の宰相ビスマルクの「ベルリンにも、パリのシャンゼリゼ通りのような華やかな通りを」という願いのもと、発展を遂げていった通りです。先月、このクーダムに「ベル・エポック(世紀末転換期のパリの輝かしい時代)」をイメージした美しいカフェがオープンしたと聞き、早速足を運んできました。

美しい内装
美しい内装の「グロス」。建物は文化財に指定されている

バス停Bleibtreustraßeから程近いクーダムの193/194番地。このたび、大規模な改修工事を終えたばかりの住居兼商業施設Haus Cumberlandの1階に、カフェ&レストラン「グロス(Grosz)」はあります。

中に入るなり、そのゴージャスな内装に驚きました。目の前には新聞や雑誌を置くための黒い台が2つ設置され、ドアの上に飾られたアンティーク時計の立派なこと! 高さ8メートルの天井とユーゲント・シュティールの柱、大理石が敷き詰められた床は、この建物が造られた1912年当時のオリジナルだとか。黒いベストとネクタイを身に着け、忙しく動き回る給仕たちの姿は、先日訪れたウィーンの伝統的なカフェハウスを想起させました。この豪華な空間は、さらに奥へと続きます。

もう1つ驚いたのが、まだ開店して数週間だというのに、店内が満員だったこと。何とか席を見付けて、メニューを見ました。「グロス」はカフェ&レストランとしてだけでなく、夜はバーにもなるので、食べ物とドリンクのメニューはかなり豊富。お値段は全体的に高めです。その中からホットチョコレート(Heiße Schokolade)を注文すると、こちらが全く予想しなかった大きな銀のポットがテーブルの上に置かれました。中にはホットミルクが入っており、皿の上に乗せられたクリーム状のチョコレートをカップに入れて溶かしながら飲む仕組みです。ミルクの量がたっぷりで、6ユーロというお値段にも納得(?)したのでした。

ホットチョコレート
立派なポットに入れて出されたホットチョコレート

ベルリンのカフェ文化として今でも語り継がれているのが、「黄金の20年代」と呼ばれる1920年代です。当時、このクーダム周辺には数多くのカフェがあり、作家エーリッヒ・ケストナーやクルト・トゥホルスキー、あるいはこのカフェの名前にもなっている風刺画家のジョージ・グロスといった芸術家の溜まり場となっては、文化を発信するサロンの役割も果たしていたのです。

現在も、魅力的なカフェが多く集まるベルリンですが、足を踏み入れる人々を古き栄光の時代へと誘うカフェがここに1つ登場したことを喜びたいと思います。

Kurfürstendamm 193-194,
10707 Berlin
Tel: 030-652142199

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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