ジャパンダイジェスト

40周年を迎えたクリストファー・ストリート・デイ

ベルリン西地区の大通り、クーダムに入ると、近隣に響き渡る大音量が聞こえてきました。次々と続く大型のトレーラーに乗っているのは、仮装する人やパートナー同士で戯れる人たちまで多種多様。通りには楽しい雰囲気が充満しています。7月最後の土曜日は、LGBTの祭典、クリストファー・ストリート・デイ(CSD)の日でした。

クーダムでのCSDのパレードの様子
クーダムでのCSDのパレードの様子

1969年6月28日、ニューヨークのクリストファー・ストリートのバーで起きた、同性愛者の人々への警察の不当な弾圧に対する抗議デモとして始まったのが発端です。1979年に西ベルリンで最初のCSDが開催され、今回で40周年を迎えました。今でこそベルリンの夏の風物詩として定着しているイベントですが、始まった頃はどのような様子だったのでしょう。

この日の「ベルリーナー・ツァイトゥング」紙に、第1回のCSDを企画準備した1人、ベルント・ガイザーさん(73)のインタビュー記事が掲載されていました。

西ベルリンの書店に勤めていたガイザーさんが、ゲイであることをカミングアウトしたのは1973年。この年、西ベルリンで同性愛者の人たちが初めて大規模なデモを行います。しかし、沿道の人々の反応は芳しいものではなく、中には心ない言葉を投げつける人もいたそうです。

1979年6月最後の土曜日、シャルロッテンブルク地区のザヴィニー広場に約500人のLGBTの人たちが集まりました。ニューヨークの事件から10周年の節目に際して行われた最初のCSDは、当初から異彩を放っていたと言います。

「70年代当時一般的だったイデオロギー色の強いデモをやるつもりはありませんでした。社会への抗議に加えて、われわれの『生きる喜び』を伝えたかったのです。その日は西に向かってパレードをして、最後はハレンゼーの湖でピクニックをして終わりました」

幸い、73年のデモの時に比べて、社会にはリベラルな空気が醸成されていたと言います。同時期にブレーメンやケルンといった他都市でもCSDが始まり、いまやベルリンだけで75万人もが参加する一大イベントになりました。「性的マイノリティーの同権は、まだ完全に達成されたわけではありません。CSDはまだまだ必要です」と語るガイザーさん。ただ、今回はリクシャー(自転車タクシー)に乗ってCSDに参加しました。「数年前から年配者の参加が増えています。リクシャーに乗るのは、昔のように健全に歩けなくなったことの象徴として」とのこと。

真夏日の中、パレードは目的地のブランデンブルク門に向かってゆっくり進んでゆきました。40年の歩みの中で、CSDは自由を愛する人たちによって一つの文化として築き上げられてきたのだと思います。

2018年のCSDのテーマは「私の体、私のアイデンティティ、私の人生」
2018年のCSDのテーマは「私の体、私のアイデンティティ、私の人生」

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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