9月末の週末、修復工事中の「新博物館(Neues Museum)」が一般公開され、3日間で2万5000人が見学に訪れました。同館は世界遺産に登録されている博物館島の一角にあり、元々は1843年から55年にかけて、著名な建築家シンケル(Schinkel)の弟子シュトゥーラー(Stüler)の設計によって建てられました。しかし第二次世界大戦で建物の70%が破壊され、旧東ドイツ(DDR)時代は、博物館島の5つの博物館の中で唯一廃墟のままさらされていたと言います。それにしても、修復中の建物の内部を公開するというのは、ベルリンでもかなり異例のこと。どういう背景があったのでしょうか
修復工事中の新博物館
それは、同館の再建プランと大きな関係があるようです。再建を手がけるイギリスの建築家チッパーフィールド(Chipperfield)による基本コンセプトは、「戦争で傷を受けた部分を目に見える形で残し、古い部分と新しい部分とを組み合わせる」という「歴史への誠実性」に基づくものなのですが、オリジナル通り忠実に修復するべきだという人々と真っ向から対立し、市民団体による反対運動は今年になって激しさの度合いを増してきました。
同じくチッパーフィールド設計で、新博物館前に建つ予定の博物館島への総合入口ホールも、賛否両論の的となっています。そういう状況の中で、同館の内部公開に踏み切ることは、文化財団側にとっても自然な流れだったのかもしれません。私が訪れた日も長い行列ができるほどの注目度でしたが、入口付近ではやはり反対運動の署名活動が行われていました。
さて、期待しながら中に入ると、入口付近の階段ホールは、むき出しのレンガの壁とまっさらなコンクリートの階段が強烈なコントラストを成しており、担当者の説明を熱心に聞く人々の姿が目立ちました。またモデルネ・ザール(Moderne Saal)と呼ばれるホールでは、天井部分はコンクリート、柱の装飾はオリジナルの部分と修復した部分とがはっきり見分けられるようになっています。
新旧両部分のコントラストが際立つ階段ホール
モデルネ・ザール
さまざまな意見はあるでしょうが、内部を一巡してみて、オリジナルの再現に忠実な博物館とは一味違う面白さを感じたのは事実です。ただ、最終的にどういう感じに仕上がるのか、それはやはり完成を待つしかありません。新博物館の再オープンは2009年10月に予定されており、古代エジプト美術と先史時代のコレクションが収められることになっています。