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平和と不戦の象徴 フラウエン教会にて

ドレスデン中心部のアルトマルクトは、歴史と文化がぎゅっと詰まった地域です。ザクセン王の居城だったレジデンツ宮殿やツヴィンガー宮殿をはじめ、世界的に有名な歌劇場ゼンパーオーパー、そして丸天井が特徴的なフラウエン教会があります。

フラウエン教会が完成したのは1743年。直径約25メートルの大型丸天井を持つ、当時としては国内最大のプロテスタント教会でした。教会内に一歩足を踏み入れると、華やかな装飾と黄金のパイプオルガンが目に入ります。丸天井の教会内は支柱がないため開放感があり、大きな窓から降り注ぐ自然光が内部を温かく照らしています。豪華な装飾が柔らかく溶け込んでいるのは、おそらく壁がアイボリーやベビーブルーのような色が基調だからでしょう。

自然光が降り注ぐ教会内自然光が降り注ぐ教会内

柔らかな雰囲気を持つ同教会ですが、実はもう一つの顔が存在します。それは第二次世界大戦の傷跡でもあるということ。大戦末期の1945年2月13〜15日、連合国軍である英米空軍がドレスデン大空襲を実行し、市民の日常は一変しました。「エルベ河畔のフィレンツェ」や「芸術と文化の都」とうたわれたこの街は、一瞬で街全体の85%が破壊され、炎とがれきの海へと変貌したのです。アルトマルクトでも多くの歴史的建築物が全壊し、「破壊不可能な教会」と称されたフランエン教会もあえなく倒壊。人的かつ甚大な文化的被害を生んだこの大空襲は、第二次世界大戦で最悪の被害といわれています。

終戦後、旧東ドイツ政権下では廃墟のままだった同教会ですが、ドイツ再統一後の1994年に再建工事が開始され、2005年10月30日によみがえりました。ここで注目すべきは、白黒のモザイク画のような外壁です。大空襲のがれきを一部再利用したのですが、がれきを活かすための工事は難易度を極め、「世界最大のジグソーパズル」と呼ばれました。なお、丸天井に立つ十字架は「和解の象徴」として元敵国であった英国から贈呈されたものです。戦争を乗り越えよみがえった姿からは、不戦への願いが強く伺えます。

しかし一部では、この惨劇を政治的プロパガンダとして利用し、戦争やナチスの犯罪を正当化する動きも生まれました。今日でも、極右勢力がフラウエン教会を引き合いに出し、憎悪・暴力を煽る発言をするなど問題視されています。犠牲者の追悼、不戦の祈り、そして新たな暴力への反対の意志表示として、毎年2月13日にはドレスデン各所で追悼式が行われます。なかでもフラウエン教会前にて開催される「人間の鎖」では、多くの人々が集まって手をつなぎ、市内を囲んで不戦の祈りを捧げます。

現在でも世界各地で悲惨な暴力が止みません。2月13日は街全体で過去の惨劇と過ちを振り返るとともに、決して当たり前ではないこの平和な日常生活に感謝したいと思います。

モザイク画のような外壁が目を引くフラウエン教会モザイク画のような外壁が目を引くフラウエン教会

芳野(よしの) 美歩(みほ)
高校・大学時代にカナダと英国へ留学し、日本での就職を経て、2020年10月に渡独。現在はドイツのおにぎり屋さん「Tokyo Gohan」にて広報および経理をサポート。趣味はロードバイクとランニング。ドイツ国内外の旅行兼マラソン大会出場のため、日々トレーニング中!
 
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