クリスマスを待つ待降節の季節、寒い外を歩く際には家々や店のショーウインドーに飾られる星飾りの温かな光にほっとさせられます。クリスマスマーケットでもおなじみの角が四方八方に伸びたこの立体星は、実はザクセンで生まれました。チェコにもポーランドにも近いヘルンフートという小さな町へ、星のルーツを探りに行ってきました。
ヘルンフートの星の歴史は、町の誕生から始まります。カトリック改革によって東から追われてきた宗教難民たちは、18世紀にオーバーラオジッツ地方へ入植しました。地域に根を下ろした敬虔な福音派の人々は、やがて世界中へ布教に出かけるようになります。布教先の貧しい子どもたちは、支援を受けてヘルンフート教区民の学校で学びました。学校の算数の授業で幾何学を理解するために、19世紀半ばごろから毎年クリスマスが近づくと星づくりが行われるようになりました。子どもたちが作った紙の星は、クリスマスに両親と会えない子どもたちのために寄宿舎に飾られたそうです。1897年、この手作りの星は実業家ピーター・フェアベークによって商品化されます。紙の角と金属の金具を自分で組み立てられ、軽い上に毎年繰り返し使えることで、当時から人気の飾りでした。
19世紀の寄宿舎での飾り付けの様子
現在のヘルンフートの星の大きさは小さな個人宅用から巨大な教会用までさまざまですが、基本は17つの四角錐と8つの三角錐の角部分から成ります。伝統的な紙素材や耐性のあるプラスチック素材など、各々の用途に合うように作られています。色も多々ありますが、純真を表す白色とキリストの血を表す赤色の組み合わせは学校で作られた初期のもので、ヘルンフートの星工房のシンボルにもなっています。部品の作製や梱包は、現在も変わらず手作業です。それぞれの部門で熟練した職人たちが、速く正確な作業を流れるように行っています。組み立て部門のプロは、直径13センチ大の星を3分以内で仕上げるそうです。こうして、毎年70万個ものヘルンフートの星が世界中へ出荷されていきます。
伝統的な赤と白を組み合わせた星
待降節に見られる星飾りは、もともと東方の三博士にイエスの誕生を知らせ、ベツレヘムに導いた星を表しています。この星がなければクリスマスを迎えられないと言うほど、信仰深いヘルンフートの人々にとって大切なものです。ドレスデンの象徴でもある聖母教会にも毎年大きなヘルンフートの星がつけらますが、これを見るといっそう特別な季節を迎えるという気分になります。
ヘルンフート工房見学:www.herrnhuter-sterne.de
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。