1日なんと40万本ものゼクトを造り、世界100カ国以上に販売をしているHenkell(ヘンケル)社。フランクフルトから電車とバスを乗り継いで約1時間のところにある、ヴィースバーデンの本社で開催されているゼクトツアーに参加してきました。
ツアーの最初に通される豪華絢爛なヘンケルホール
ツアーの初めに通されたのは、ヘンケルホール。豪華絢爛なこのホールは、世界中からの買い付け商人を最初に招き入れていた場所でした。戦略としてヘンケル・ゼクトに高級なイメージを持ってもらおうとしたのです。ここでぜいたくにゼクトで乾杯し、ツアーがスタート。優雅な演出に、気分が高まります。
高揚した気分のまま、次は地下15メートルにもなる地下7階に案内されました。もともとこの場所にはセメント工場があったそう。すでに掘り起こされているこの場所はゼクトづくりに適した環境だということで、ヘンケル社が買い取り、新たな拠点としました。ちなみに米国・ニューヨークにある自由の女神像の土台に使われたセメントの一部は、ここから運ばれたものだそうです。
使用してきたさまざまな樽。迫力のある大きさや彫刻も必見!
創立者アダム・ヘンケルは、当時ドイツにいたフランス兵を相手にワイン商をしていましたが、ゼクト製造に着手。そのままヘンケル・ゼクトを人気商品にしていきました。アダムや孫のオットーのゼクトづくりの逸話もツアーに登場します。私が一番面白いと思ったのは、おいしいゼクトができた「ハプニング」です。ゼクトはブドウに砂糖とイースト菌を混ぜ、かつてはワインボトルに入れて発酵させて造っていました。ある日、ボトルが発酵に耐え切れず割れてしまいます。ところがその液体を舐めてみたところ、今まで以上においしいゼクトができあがっていました。たまたま空気中にあるイースト菌に触れて二次発酵したのですが、そのことがきっかけでより上質のおいしいゼクトを生み出す方法を発見したのです。以来、ヘンケル・ゼクトは二次発酵をさせるようになりました。
初めて使用されたゼクトボトルと創立者アダム・ヘンケル夫妻の肖像画?
さらに興味深かったのは、世界的に販売をするために英国へ行き、広告の重要性に着目し、米国まで勉強しに行ったことです。ヘンケル社は、その後ヘンケル・トロッケンを広告で初めて打ち出し、ブランド化に成功しました。ツアーでは、これまでの広告ポスターを見ることもできます。
ツアーで聞ける内容は盛りだくさんで、設立以来、試行錯誤してきた過程を知ることができます。中には産業革命や市民革命など、教科書で習ったことのある用語も。自分が歴史の上に立っていることを実感してワクワクしたとても良いツアーでした。それから、ツアーの最後に大切なアドバイスをもらったので、皆さんにもこっそりお伝えしたいと思います。「ゼクトは寝かせたからといっておいしくなるわけではありません。最長でも製造して2年以内にぜひ飲んでください」
2013年からヴィースバーデンに在住。日本とドイツで出産を経験し、現在は2児の母。つたないドイツ語にあくせくし、日々格闘中。人の工夫が伝わる建造物や食器を見るのが好き。