天気が変わりやすいドイツでは、野外での予定があると天気予報と見比べて一喜一憂してしまいます。そんなドイツの気象サービスを提供したり、気象データを集めたりしているのがドイツ気象局(Deutscher Wetterdienst)、通称DWDです。国内183カ所の気象観測所とボランティアによって運営される1700以上の観測局を介して、膨大な気象データの収集・解析を行っています。そのDWDの本部が、フランクフルトから車で約30分の町オッフェンバッハにあります。気象予報サービスを提供する事務局のほか、ラインマイン広域公園の一部を、気象公園(Wetterpark)と呼ばれる野外博物館として提供しています。
目視観測により大気の状態を確認できる観測塔
約2万㎡の広大な敷地内には、遊歩道に沿って太陽や嵐、気圧、風など、気象に関する12のテーマに分かれたステーションがあり、それぞれ立体オブジェと説明パネルによって気象学の基礎を分かりやすく紹介しています。私が訪れたときには、気象博士のヴェルマー・ホルスト氏によるガイドツアーも行われていました。
まずは、遊歩道前にある自動気象観測所へ。電子センサーで測定された温度や雨量、風速といった気象データは、ネットワークを介してDWDのデータセンターで管理されます。気象データの収集というと、理科の授業で習った百葉箱しか思い付きませんでしたが、DWDはこうした無人気象観測所を約120カ所も擁しているそうで、現代的な測定技術に驚かされました。続いて、遊歩道を通って園内の各ステーションを回りました。嵐のステーションでは、実際に落雷を受けた木を前に、雷発生の仕組みをパネルで説明したり、風のステーションでは風向きに合わせて方向が変わる20本のフラグを基に、風や竜巻、風力について紹介しています。
20本のフラグで風向きを確認し、風の仕組みを学ぶ風ステーション
中でも面白いと思ったのは、空気圧のステーション。3m四方の立方体オブジェと、その中の空気量に匹敵する金属製キューブがあり、金属キューブは持ち上げて重さを確かめることができます。金属キューブの重量は常に同じ27キロですが、オブジェ内の空気は温度や湿度によって変化します。そうした空気圧の仕組みを、頭と体を使って体験することができました。視覚的に工夫されたパネルと体感オブジェによって複雑な現象も感覚的に理解できるので、大人から子どもまで楽しめるのも魅力です。
自然界と気候の関係を研究する生物季節学や、気象衛星、雲や大気の状態など、身近なようで知らない気象について、多角的に知識を深められました。近々ビジターセンターも開館予定とのことなので、今度はどんな気象展示を見せてくれるのか、楽しみです。
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。