ドイツではクリスマスの時期になると、どこの教会でもクリスマス関係のコンサートが目白押しとなります。昨年のクリスマスは、ハンブルクのシンボルであるミヒャエル教会のスカンジナビア・クリスマス・コンサートに行ってきました。この時期の定番は、何といってもバッハ作曲のクリスマス・オラトリオ。イエス・キリストの誕生物語を、オーケストラを伴奏にソリストと合唱団が歌で表現します。「毎年同じ曲で飽きないのかしら?」と思ってしまうのは、日本人的な感覚なのでしょうか。ドイツ人にとっては、毎年クリスマス・マーケットに出かけるのと同じように、クリスマス・シーンにつきものの音楽なのでしょう。
天使たちの合唱
そういうわけで、ドイツの音楽には季節感があります。クリスマス・オラトリオはもちろんクリスマスの季節に、レクイエムは11月の万霊節(Allerseelen)や贖罪の日(Buß-und Bettag)あたりに演奏されます。そして、イースター(復活祭)前の受難節にはバッハなどによる受難曲のオンパレードとなります。受難曲はイエス・キリストが十字架に架けられて死んだ後、葬られた時点で終わっていますから、イースターを迎えてから演奏されることはまずありません。これらの楽曲は教会だけでなく、コンサートホールでも演奏されます。
コンサートホールの場合、一流の指揮者と演奏者、素晴らしい音響設備……と条件は揃っているのですが、もともと教会の中で演奏することを想定して作曲されているため、やはり教会で聴く方が、曲の本質をトータルで味わえるように思います。日本でもバッハのマタイ受難曲などのコンサートがありますが、そこでは季節に関係なく演奏されます。そのコンサートに招待されたドイツ人指揮者曰く、「10月にマタイ受難曲? 日本人は何を考えているのだろう」。
せっかくドイツに住んでいる私たち。今年は季節に合った音楽を教会で聴いてみませんか? 今ならイースター前の受難曲がお勧めです。
たくさんの聴衆
ミヒャエル協会の祭壇画とクリスマスツリー
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?