皆さんは、「SBGG」という言葉を聞いたことがありますか? 正式名称はGesetz überdie Selbstbestimmung in Bezug auf denGeschlechtseintrag(自己決定法)で、昨年11月に発効した法律です。それ以前は、性別を変更するためには専門家評価が必要とされ、法的手続きも複雑でしたが、この法律により、自分の認識に基づいて自己の性別を決めることができるようになりました。
イベントのチラシ
昨年12月にブラウンシュヴァイクで開催された「TIN*TA」というLGBTIQAの人々が集まる催しで、僕はSBGGのことを聞きました。このイベントでは、性的マイノリティーの当事者と非当事者がお互いに理解を深め合い、交流することを目的としています。僕は二つのワークショップに参加しました。インターセックス当事者がその実情を語るワークショップでは、トランスジェンダーの方が関心を傾ける姿が印象的でした。もう一つのワークショップでは、SBGGが発効したことを受けて、何が変わったのか、現状での課題などを参加者で話し合いました。
日本では性別変更の申請に、18歳以上であること、2人以上の医師の診断書、婚姻をしていないこと、未成年の子どもがいないこと、生殖腺がないこと、性器の外観に関する要件を満たしていることが要件となっています。SBGGでは、まず医師の診断書が必要ありません。18歳以上であれば自己申告のみで申請が可能です。婚姻や子どもの有無も関係ありませんが、性別を変更した場合は、パートナーと子どもに伝える義務はあります。14〜18歳までの子どもは、片方の親の同意があれば申請可能で、医師の判断は求められません。そして申請してから約3カ月で変更の作業が終わることになり、役所はほかの書類の性別変更も義務付けられます。このように簡易的な行政手続きで法的な性別変更が認められるため、すでに多くの方が活用しているそうです。しかし、簡易的になったとはいえ、役所の官僚的プロセスの複雑性は顕在。ワークショップでは、実用上の難点も挙げられました。
廃棄されるはずの食品で作られたケータリング
生まれてから男性というカテゴリーの中だけで生きてきた僕は、自発的に自分の性別を決めたわけではありません。従って、自己の性に違和感を感じること、自分の性別を決定する困難を肌で実感することは難しいです。このような交流は、どうして僕は自分の性を疑うこともなく生きて来られたのか、自分が生きている社会を改めて見直す機会にもなります。
ワークショップの後は、お昼ごはん。フードシェアリングと提携したケータリングでした。処分されるはずの野菜を使ったヴィーガン料理はとてもおいしかったです。お互いが尊重され合いながら、個人が自己決定をすることに障害のない社会が実現できればと願いつつ、2025年もこのようなイベントがあれば積極的に参加していきたいと思いました。
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
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