コーヒーが入った紙コップを片手に颯爽と歩く姿は、ハノーファーでも日常の風景となりました。カフェや駅の売店で、コーヒーを買って飲むのは至福のひと時。しかし年々増え続けている使い捨て紙コップは、深刻な資源の無駄遣いです。それをなんとか減らそうとハノーファー市はこのほど、ホットドリンク専用のリユースカップ「Hannoccino(ハノチーノ)」の導入を決めました。1個2ユーロのデポジットをかけ、市内での流通を目指しています。
赤と黒のスタイリッシュなデザインの「ハノチーノ」カップ
「ハノチーノ」は、ハノーファーとカプチーノをかけたもの。赤地のボディーに、市内の名所と「Hannoccino」の文字が黒で描かれ、なんともおしゃれです。有機分解できる素材でできており、洗浄して70~80回は使えます。
市はまず、大きな催し会場や会議場、見本市、サッカー場など公共施設や公共性の高い場所での使用を目指しており、徐々に一般のカフェやパン屋でも導入を進めていく方針です。早速、8月27日に行われるサッカーチーム・ハノーファー96のシーズン明け初となるホームグラウンドでの試合で使われます。
以前はコーヒーというと、喫茶店で味わうもの。友達とおしゃべりしたり、新聞を読んだり、ゆっくりと時間を過ごすためのお供でした。それが忙しい昨今、チェーンのカフェが増え、持ち帰りが一般化してきたように感じます。映画やドラマなどの影響もあってか、こだわりのコーヒーを買い、歩きながら飲むというのが一つのスタイルとして市民権を得ています。中には店内で飲むのに、紙コップしか置いていないカフェもあり、時代の流れを感じます。個人的には紙コップで飲むより、陶器で飲んだ方がよほど美味しいと思うのですが……。
カフェやキオスクなどあちこちで、お持ち帰りコーヒーについて「Coffee to go」との英語表記が定着し ており、ドイツ人の知り合いが「最近ドイツでは『トーゴーコーヒー』というブランドが人気なんだよ」とふざけて言うほどです(Coffee to goのドイツ語読み)。ドイツでは1時間に32万個、年間30億個の紙コップが消費されていると言われています。日本でもコンビニで本格的なホットコーヒーやアイスコーヒーが100円という安価で売られていてびっくりしましたが、その傾向はどこも同じようです。
リユースカップだと、場合によっては自分で洗ったり、お店に返しに行かなければならならなかったり、紙コップと違って手間がかかることもあるでしょう。だからこそ、自治体が音頭を取ってすすめることに意義があります。ちなみにドイツでは2015年、一人当たりのコーヒー消費量は年間162リットルで、ビールの106リットルよりも多くなりました。ドイツ人はコーヒーが大好きなのです。
毎日大量に捨てられている紙コップ
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。