日本のNPO アースウォーカーズ(代表・小玉直也) 主催で、福島の高校生8人がハノーファーにやってきました。高校生達は8月6日の「広島の日」の式典に参加したのをはじめ、7日から9日までヘミンゲン統合学校で現地の高校生に混じって授業に出席しました。ドイツの授業を体験するとともに、英語で東北大震災と原発事故の体験談を発表しました。
ヘミンゲン学校にて現地の生徒達と(ハイコ・ボルテ提供)
6日は第二次世界大戦で屋根が焼け落ちたエギーディエン教会で、広島に原爆が投下された8時15分に合わせて市の式典が開かれました。参加した生徒達は日本から持って来た折り鶴を供えます。ドイツの高校生達から「日本の人のことを考えていて、やさしいなと思った」という感想が出ましたが、式典は被爆者を追悼するためだけでなく、広島での悲劇を思い出すことで二度と繰り返してはいけないという警告の意味があります。こうして年に一度、未来への平和の誓いを新たにしているのです。
ヘミンゲン統合学校では社会を担当するハイコ・ボルテ先生が受け入れてくれ、高校1年生の生徒達と一緒に英語や化学、数学、歴史などさまざまな授業に参加することができました。中でも物理の授業で、半年間にわたって放射能について学ぶことに驚きました。授業で「放射能と聞いて何を思い浮かべるか」と先生が尋ねると、生徒達から「危険」そして「死」という言葉が真っ先に出ました。続いて「核分裂」「エネルギー利用」「原発」「核廃棄物」「福島」「レントゲン」「不毛の地」と続きました。それから先生は「放射能はポジティブなものかネガティブなものか」と問いかけると、日独の高校生から「ネガティブなもの。発電には再生可能エネルギーを使えばいい」「医療で利用できるのは良いけど、それ以外は良くない」「事故が起こったら大変」との意見がでました。
環境教育施設のエネルギーの庭で話を聞く生徒達
また宗教の授業で、6年前は小学生だった福島の生徒達が東日本大震災の体験や日常生活の様子を発表すると、さまざまな質問が出ました。今でもチェルノブイリから毎年何百人も保養にきているドイツでは、福島原発から60~70キロ離れた場所で普通の生活が営まれていることに驚きを隠せない様子でした。
アースウォーカーズは福島の子供達の保養を実施しており、日本国内はもちろん中学生をオーストラリア、高校生をドイツに連れて来る活動をしています。今回は7月末から19日間の日程で再生可能エネルギーや平和をテーマに各地を回りました。
学校の休みが州ごとに異なるため、今回が初めてハノーファーへの訪問となり、私も4日間ボランティアでコーディネートと通訳をしました。ドイツと日本の生徒達による交流は、お互いに新たな発見をもたらす貴重な機会となりました。今回私も参加してみて、世界のどこにいてもずっと元気に暮らしていけるのが一番だと改めて感じました。
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。