ジャパンダイジェスト

豊かな自然と歴史の継承、小さな村の民族文化博物館

ライプツィヒとドレスデンの間にあるグリマ(Grimma)やアルテンブルク(Altenburg)といった中小規模の市町村は、ドイツの「トスカーナ地方」と言われており、その豊かな自然が愛されています。週末に自転車を列車に乗せて、ふらりとワイナリーを巡るのも良し、森の中にキノコを探しに行くのも良し。散歩や遠足に人気の場所です。

1628年当時の洗濯部屋(昔の手回し洗濯機、アイロン台)1628年当時の洗濯部屋(昔の手回し洗濯機、アイロン台)

さて、この地域にシュヴァルツバッハ(Schwarzbach)という小さな村があります。ドイツ人の夫の親族に当たる人がここに住み、博物館を運営しているので、9月末の収穫祭に合わせて出かけてきました。彼女が代表を務める「シュヴァルツバッハの民族建築と農民文化博物館」と名付けられたNPO団体は、地方に存在する歴史的な建造物を維持するため、1997年から活動を開始。彼らは、この地方に1586年から1715年の間に建てられた4つの建物を買い取ってシュヴァルツバッハに移築し、博物館として使える状態にしたのです。これらの建物は、歴史的に価値ある建築物が現在も使われている例としては、ザクセン州で唯一であり、ドイツ国内でも非常に稀です。

1628年当時の狩猟の部屋1628年当時の狩猟の部屋

建物の中には当時の生活を再現する家具や内装が再現され、300年以上昔のドイツの田舎暮らしを垣間見ることができます。さらにかつて鍛冶屋だった建物では、当時盛んだった織物機や籠編みなどの手工芸を実際に村に住んでいる人たちが実演してくれます。博物館の開館時間と収穫祭などの催し以外にも、学校や幼稚園の子どもたちを団体で受け入れ、19〜20世紀の暮らしと働き方を学ぶ体験学習も行っています。大人向けには、16世紀頃の機織を体験するワークショップなど、ここでしかできない貴重な機会も見逃せません。

奥に見える建物がかつての鍛冶屋。地上階に新しくショップがオープン。その右手が改修中の元小学校奥に見える建物がかつての鍛冶屋。地上階に新しくショップがオープン。その右手が改修中の元小学校

今回の収穫祭に合わせて、新しく博物館ショップがオープンしました。そこでは、実際に村に住む人たちが昔からの技術を受け継いでつくった編み物や陶芸が売られます。現在はさらに、もともと小学校だった建物を改修して、当時の様子を再現する博物館の計画が進んでいるそう。

ここは古いものを「展示」しておしまいではなく、暮らし方と地域文化の歴史を現代に継承していく素晴らしい場所だと感じました。何よりも住んでいる人たちが、自分たちの財産としてうれしそうに、そして誇らし気に活動に関わっているのがすてきでした。

シュヴァルツバッハ博物館
Wiesenweg 1a, 09306 Königsfeld OT Schwarzbach
https://www.museum-schwarzbach.de/

ミンクス 典子
福岡県出身。日独家族2児の母。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。2011年に空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」立ち上げ、18年まで共同代表。15年より元消防署を活用した複合施設 Ostwache共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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