気温が安定して20度を超えるようになり、ガーデニング日和の日が続いています。お隣のバルコニーに植物が増えてきたり、ご近所さんから早くも収穫物を分けてもらったりと、ガーデニングシーズンの到来を感じている人もいることでしょう。
ドイツでは、切り花を含め植物に1人当たり年間100ユーロ以上を費やすといわれています。世帯当たりの支出にすると、日本円で数万円。単純に比べられる数字ではありませんが、日本では一世帯当たり鉢物に年間8000円程度が使われているのと比べると、少ない金額ではありません。ドイツに住む人たちの植物好きがうかがえます。
そんなガーデニングが盛んなドイツには、90万軒を超えるクラインガルテンがあるといわれます。クラインガルテンは小さな土地の区画で、使用権を購入または借りるなどして、主に野菜や果物、花の栽培に利用できます。クラインガルテンのアイデアは、150年以上前にライプツィヒの医師シュレーバーが初めて提唱しました。そのため、シュレーバーガルテンと呼ばれることもあります。クラインガルテンが提唱された19世紀後半は、工業化と都市化が進んだ時代で、当初は一般市民の生活改善や教育が目的とされました。ライプツィヒはクラインガルテンの発祥の地として知られ、クラインガルテン博物館(Deutsches Kleingärtnermuseum)という博物館もあります。
ライプツィヒ市内中心部のクラインガルテン
コロナ禍ではクラインガルテンが人気となり、利用希望者も急増していました。現在ではコロナの制約もなくなり、クラインガルテンを手放す人が増えたという話も聞きますが、依然としてクラインガルテンを新たに借りるのは簡単ではないようです。
クラインガルテンで本格的にガーデニングをするほどではないけれど、植物と触れ合う時間を持ちたいという人は、バルコニーなどでガーデニングをするほか、コミュニティーガーデンの活動に参加してみてはいかがでしょうか。筆者はザクセン州の支援を受けて新しく造られた、ライプツィヒ市西部のマーケットホールの前にあるコンテナ・コミュニティーガーデンの手入れをしています。植物を探すときには、ホームセンターやガーデニングショップも便利ですが、地域のマーケットや植物市をのぞいてみると、珍しい植物や地域の植物が見つかるかもしれません。地元の農家が苗を格安で提供していることもありますよ。
地域のマーケットホールのコンテナガーデン
これからガーデニングを始めてもまだまだ遅くはありません。ライプツィヒのように、春だけでなく夏の終わりに秋の植物市が開催される街もあるはず。本記事をきっかけに、植物を育ててみたいと思う人が増えたらうれしいです。
地元農家が1株30セントで販売している苗
IT系の翻訳者・プログラマー。オーストリア、インドを経てドイツへ。ライプツィヒには2016年より在住。三度の食事と、手に入らない食材を自分で育てるのが何よりの楽しみ。古巣のアート分野に戻ることを夢見ている。