ジャパンダイジェスト

生まれ変わるハウプトポスト

ライプツィヒの中心地にあるオペラ座(Oper Leipzig)と、道路を挟んで向かいに建つ「ハウプトポスト(Hauptpost=郵便局本社)」は、2011年から空き家の状態が続いていました。しかし現在、投資会社のKSW社が1億ユーロの建設費を投じ、ライプツィヒの建築設計事務所フックスフーバー(Fuchshuber Architekten GmbH)による改修計画が進められています。

ハウプトポスト, 完成イメージ
新しい「ハウプトポスト」の完成イメージ

歴史的建造物に指定されている建物の重要性と工事の規模から、今年のライプツィヒ市における最重要建築プロジェクトとなっているこの改修計画。完成予定は2017年で、これまでの郵便局の機能から一転して、新たに学生寮やオフィス、レストラン、スーパーマーケット、医療センターが入居し、地下駐車場も新設されます。さらに特徴的なのは、既存の6階建ての建物の上に2階分が増築され、スカイバーと会議室が設置されることです。歴史的建造物に指定されているため、ファサードは現状のデザインを維持し、新しくエネルギー効率型の改修工事が施されます。

この建物は、もともとライプツィヒの南部に位置していた郵便局本社が第2次世界大戦中に破壊されてしまったため、早急に建物を新築する必要に迫られたことに由来します。1959年から建設計画が進められ、3年7カ月という長きにわたる工期を経て1964年に完成しました。工事が長期間に及んだというだけでなく、当時としては異例の巨額投資によって完成した建物。その内外部のあちこちに、現在では考えられないほど丁寧な手仕事による装飾が施されています。ファサードの長さは110mにも及び、ライプツィヒの市街地をぐるりと取り囲んでいる環状道路(リング)の重要な景観にもなっています。

このハウプトポストは、旧東ドイツ時代には郵便局の機能と旧西ドイツやドイツ国外への電話連絡を取り次ぐ交換台の役割を果たしていただけでなく、「M」という名前の部屋では「シュタージ(Stasi)」が郵便物を検閲していました。ご存知のように、シュタージとは旧東ドイツの秘密警察・諜報機関 で、ライプツィヒ市民を徹底して監視していた存在。1989年に東西を隔てていたベルリンの壁が崩壊すると、シュタージは「国家保安局」に改称され、同年末には解散、必然的に「M」の部屋も消滅したのです。

郵便局, オープンハウス, ハウプトポスト
郵便局として機能していた当時の名残を見せる内部(左)と6月29日に開催されたオープンハウスの様子(右)
1日で500人以上の来場者を数え、市民の関心の高さがうかがえる

このように激動の歴史の舞台となった郵便局本社は、まさに今、新しい機能を備えつつも「ハウプトポスト」という元来の名称はそのままに、ライプツィヒの新しい顔となる建物に生まれ変わろうとしています。

ミンクス 典子
福岡県生まれ。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の建築設計事務所に所属し、10年に「ミンクス.アーキテクツ」の活動を開始。11年よりライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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