ドイツ国内全体が揺れ動いているテーマ「難民」。ライプツィヒも当然、例外ではありません。昨年、市が受け入れた難民が1232名だったのに対して、今年は年末までにおよそ5400名を受け入れる予定です。受入れを予想していた数は夏を過ぎる頃から加速度的に増え続けています。市のあちらこちらでボランティアによる物資支援センターが幾つも設立され、ドイツ語コースの無料提供やドイツ生活へのアドバイスなど、難民支援に関わっている人は数えきれません。戦争を逃れてライプツィヒまで辿り着いた難民に、なんとか救いの手を差し伸べようとする人が本当に多くいます。
物資支援センター
亡命申請が審査される前の第一段階の難民収容は、市ではなくザクセン州の管轄で、大学の体育館など州が所有する建物や土地で行われています。しかし、大きな空間に詰め込まれた簡易ベッドと簡易トイレでの仮住まいには、難民からだけでなく市民からも多くの非難が向けられています。配給される食事が少な過ぎる、衛生面の問題、さらに近隣住人とのあつれきなど、課題は増え続ける一方です。さらに、母国での戦争や亡命中に親を失った孤児たちの受入れと、ドイツ社会になじめるよう統合政策をどう進めるかも難題です。滞在許可を得た難民の次の段階の住まい整備も急ピッチで進められていますが、予想をはるかに超えて膨れ上がる数の受け入れのため、難航しています。
最悪な事態は、難民同士での暴動です。市北部のメッセに約1800人の難民を一時収容したところ、9月末にシリア人とアフガニスタン人の間で暴動が起きました。およそ200人が夜襲をかけ、警察や救急車が出動して負傷者も出ました。また北東部の空き地に、一時収容のため州が約1000人を受け入れるコンテナ群を建設中ですが、市民からはネガティブな反応も表れています。最初に数個置かれたコンテナに「誰もあなたたちを受け入れたくない」と大きく落書きがされました。ちなみにこの落書きは、数日後には"Refugees welcome (難民歓迎)" と書き換えられました。
落書きされた収容施設コンテナ
同時にライプツィヒ恒例の月曜デモは、異様な状況に発展しています。イスラム化に反対するドレスデンの欧州愛国者PegidaがライプツィヒのLegidaに飛び火して、それに対抗するデモとの衝突を避けるため、警察の物々しい警備が毎回敷かれています。増え続ける難民と、それを支えようとする市民、一方で難色を示す人々、1989年のドイツ再統一以来の大きな揺れが生じています。
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de