現在ライプツィヒでは、東部にある消防署が移転して空き家になるため、今後の活用について議論が湧き上がっています。消防署は2018年の秋を目処に、徐々に別の地区へ引っ越しをする予定で、現在すでに約7割が空き家状態になっています。公共建築なので建物は市が所有しています。
消防署の外観
今後の計画については現時点で三つの案があります。まず一つ目が粗大ごみ処理場としての活用。小学校の増設にあたり、現在の場所から移転しなくてはならないため、その移転先として消防署跡地が候補に挙がりました。ただし、住宅地域に位置するため、ゴミ処理に伴う騒音を懸念し反対意見が多く出ています。二つ目の計画は、市営プールの新設です。2020年までにライプツィヒ東部に市営プールを2カ所新たにつくる計画を進めている市は、建設可能な土地を確保するため、あらゆる可能性を探っています。人口が増え、成長しているライプツィヒでは市内に大規模な土地を確保することが難しくなっているのです。そして最後の計画は、「オストヴァッヘ (Ostwache)」という市民団体による社会文化施設の設立です。
今年のはじめ、市議会では消防署が完全撤退するまでの間、三つ目の案を暫定的に採用しました。東部を中心に活動している団体や活動家達が集まって、地域のコミュニティセンターとして活用する計画を進めています。7400㎡の敷地には4つの建物がコの字型に並び、アトリエやカフェ、シェアオフィス、音楽スタジオ、工房、学校などの入居が計画されており、東地区の新しい文化拠点として大きな注目を集めています。現段階では最終的に残りの二つの案になる可能性も残っているため、今後の動きが気になるところです。
中庭で開催された春の祭典
5月13日、ドイツの各都市で開催された「Tag der Städtebauförderung (都市建設助成の日)」にオストヴァッヘでも春の祭典が開かれました。ライブミュージックが流れる横では、手作りのケーキとコーヒーが寄付金と交換で振る舞われ、およそ500名の来場者で賑わいました。木工細工と布印刷の体験ワークショップや、政治・文化・社会活動を行っている団体の情報ブースなど、小さな子供から高齢者まであらゆる人達が楽しめるプログラムが組まれました。市民が自分達で企画・運営をすべて行う、このような商業目的とは対極にある催しは、地域にしっかりと根を下ろした「文化」を作っているように思います。暫定利用の後も、彼らの活動が継続されることを願うばかりです。
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de