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白バラの祈り 現代の私たちへの問いかけ

まだ日本にいた頃、「白バラの祈り―ゾフィー・ショル、最期の祈り」という映画を見て、衝撃を受けました。白バラとは、第二次世界大戦時にナチスに抵抗した学生グループの名称です。その主要メンバーがミュンヘン大学の学生であったことから、ミュンヘン大学内には白バラ記念館があり、彼らの活動が展示されています。この記念館は、学生でなくても誰でも訪れることができます。

ミュンヘン大学の医学生だったハンス・ショルとアレクサンダー・シュモレルは学徒動員で東部戦線に行った際、ドイツ軍の行う非人道的な虐殺行為に疑問を感じたといいます。そして人間の自由と権利を求め、戦争終結のために白バラ抵抗運動を始めました。1942年6月のことです。

その後、ハンスの妹ゾフィーら数名が加わり、反戦を訴えるチラシを作成し、郵送や配布を行いました。彼らは危険を承知で、「誰かが始めなければならない。戦争が終わらない限り、人間の権利と自由はない」と活動を続けていました。しかし43年2月18日、ハンスとゾフィーがチラシを大学構内に撒いていたところを発見され、逮捕されてしまいます。

ショル兄妹が逮捕されたミュンヘン大学構内ショル兄妹が逮捕されたミュンヘン大学構内

その後、仲間だったクリストフ・プロープストも逮捕され、彼らは4日後の2月22日に死刑判決を受け、その数時間後に処刑されました。その後も次々と仲間が逮捕されて処刑に。哲学の教授であったフーバー氏以外は、いずれも21~25歳の若者たちでした。ゾフィーは取り調べの際、「自分の行動を後悔しているか」という質問に対して、「私は今でも、自国民のために、自分ができる最善のことをしたと信じている」と毅然(きぜん)と答えています。自分の良心と信念に基づいて、既成勢力の重圧に屈することなく活動し続けた彼らの勇気と精神力に心が震えます。

映画にも登場した、彼らが逮捕された大学構内には、白バラメンバーのレリーフやゾフィーのブロンズ像があり、ミュンヘン大学の学生たちにその精神を伝えています。

大学構内の壁にある、白バラメンバーのレリーフ大学構内の壁にある、白バラメンバーのレリーフ

私が学内の白バラ記念館を訪れた際には、高校生が授業の一環としてクラスで訪れており、職員から説明を受けていました。このように教育を通して、正しいことを正しいと言える勇気を養うことは素晴らしいと思います。高校生たちの姿を見て私自身も、「もし今後、かつてのような思想統制が始まった場合、あなたは自分の良心と信念に基づいて行動できるか?」と問いかけられているように感じました。

白バラ記念館を見学する高校生たち白バラ記念館を見学する高校生たち

井野 葉由美(いの はゆみ)
イエス・キリストに出会って、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。今でも少女マンガ、オペラ、ダンスは大好きです。 www.muc-japan-christ.com/

 
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