ジャパンダイジェスト

Mini-München ―子どもたちが創る街

皆さんは子どもの頃、山の中や空き地、大きな木の上に、友達と一緒に「秘密基地」を作ったことはありませんか?そこは子どもだけの隠れ家。友達同士で決まりごとを作ったり、親に内緒で猫を飼ったり……。先日、ミュンヘンオリンピック会場跡地の公園を散歩していた時のこと、そんな子どもの頃を思い出させる風景に出会いました。

それは、8月3~21日に当地で開催されていた「Mini-München(ミニ・ミュンヘン)」。隔年の夏休みに行なわれている7~15歳の子どものためのイベントです。会場全体がミニサイズの街になっていて、この街を取り仕切る主役は子どもたち。彼らはここの市民として登録すると、何かの職を得て働いたり、職業訓練を受けたり、あるいは大学に進学することになります。そして、労働によって得た給与から税金を納めます。手元に残ったお金は銀行に預けることもできるし、映画を観に行ったり、買い物をすることもできます。もちろん銀行員や劇場の係員も、ものを作ったり、売ったりする人も、すべてその街の市民、つまり子どもたちです。1人ひとりが社会の中で何かしらの役割を担っているというわけです。

ミュンヘン
子どもの姿だから微笑ましい、
“ハローワーク”前での仕事待ち

また週に一度選挙が行われ、市民権を得ている児童たちの投票によって市長が選出されます。そして新しい規則は市民投票によって決められ、規則を守らない人は裁判に掛けられるなど、現実の社会さながらに自分たちの社会を自分たちで動かしていくことを体験できるイベントなのです。そういった体験を子どもたちにさせるためにも、この街の運営に携わる大人は限られており、さらに年上の子どもが年下の子どもをサポートし、すべて子どもたちのみで物事を進めていけるよう配慮がなされています。遊びを通して社会の仕組みを教え、協調性や自立心、責任感を養っていく……。大人も考えたものです。また企業や個人など、大人たちからの寄付によってイベントが運営されているため、参加費が無料になっているという点も、子どもたちに社会の一端を担う善き市民としての模範を示すことになるのではないでしょうか。

場内の至る所に“ Eltern Verboten(親は入るべからず)”と書かれていて、うっかり足を踏み入れようものなら、下の方から「ここは立ち入り禁止!」と警備員の声がしたり、不注意に歩いていると足元をタクシーにひかれそうになるという、見学する大人にとっても面白くてかわいらしい街でした。また、目の前の“ミニ”大工さんが若かりし日の自分の姿に見えてくるなど、ノスタルジックな気分に浸ることもできました。彼らもいつか、こんな夏休みを懐かしく思い出すのでしょうね。

ミュンヘン
結婚式場の裏。懐かしい「秘密基地」のよう

さかいざわ はる
2004年よりミュンヘン在住。主婦の傍ら、副業でWEBデザイナー。法律家の夫と2人暮らし。クラブ通い、ゴルフが趣味のおばさん。
 
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