秋晴れとなった11月のある日曜日にミュンヘン市内の英国庭園(Englischer Garten)で行なわれた、小さなマラソン大会をご紹介します。この大会の主催者はムーヴ・フォー・サポート(Move4Support e.V.)と言い、文字通り「サポート=支援」を目的に活動しています。「何かを、誰かを『サポート』したいと願う1人ひとりの力とアイデアが集まれば、大きなことも叶うはず」—— そんな団体の思いは2007年、「ラン・フォー・アフリカ(Run 4 Afrika)」という、アフリカの開発途上国の支援を目的としたチャリティーマラソンとして実現し、毎年夏に英国庭園で開催される行事となりました。
そして彼らのアイデアは今年、趣向を変え、「ラン・フォー・ミューニック(Run 4 Munich)」として第1回の開催に至ったのです。支援対象は、アフリカではなくミュンヘン。広い世界に目を向けると同時に、自らの足元を見直す。すると、ここにも支援を必要としている人がいたのです。
10時のスタートを待つ人たち。緊張感より、
楽しみな気持ちが伝わってくる
ミュンヘン市内北部には、青少年犯罪が目立つ、ゲットー化した一帯があります。親の保護や公的支援を受けられない児童・青少年の数は、この地域だけでも400人に上ると言われています。そのような環境下にいる児童の社会的孤立を防ごうと立ち上がった市民によるプロジェクトが、ゲットーキッズ(ghettokids e.V.)。この団体は、ゲットーの子どもたちに、仲間と一緒に遊んだり、勉強したり、好きなことに熱中する中から、情緒や社会性を身に付けさせることを目的に活動しています。今回のチャリティーマラソンは、ムーブ・フォー・サポートとゲットーキッズが手を組んで行なった初のイベントとなりました。
今回参加した100余人のランナーの参加費(1人18ユーロ)のうち、マラソンの運営費を差し引いた全額がゲットーキッズの行なうプロジェクトに充てられるそうですが、沿道で旗を振る人も、応援楽団もない、見渡す限りいかにもシンプルなマラソン大会でした。ランナーは5kmと10kmの2つのコースのうち、どちらかを選び、前者はルート1周、後者は2周を回ってゴールするというもの。空気の澄んだ日曜の朝に、秋景色の美しい英国庭園を少し走ってみようか……という雰囲気の参加者には友達同士や家族連れが多く、走ることを競うより、誰かと一緒に走ることを楽しんでいるかのように思われました。
乳母車を押しながら走る参加者も
2004年よりミュンヘン在住。主婦の傍ら、副業でWEBデザイナー。法律家の夫と2人暮らし。クラブ通い、ゴルフが趣味のおばさん。