天気に恵まれた今年の夏がゆっくりと過ぎ去り、徐々に秋めいてきました。私は毎年この時期、ハイキングに出掛けることにしています。暑過ぎず寒過ぎず、日照時間もまだ若干長いので、時間を掛けて山や森を歩くのに最適だからです。今回は、アルプスの自然が美しいガルミッシュ・パルテンキルヒェンよりも、さらにオーストリア寄りにあるミッテンヴァルト(Mittenwald)を訪れました。
ミッテンヴァルトへは、ミュンヘンから南西へ車で約1時間半。この町と近郊の町を結ぶハイキングコースはたくさんあります。町のツーリスト・インフォメーションで簡単な地図を手に入れ、クレー(Klais)という町からミッテンヴァルトへ向かう約15km、約5時間(休憩を含む)のコースを歩くことにしました。
スタート直後から、なだらかな上り道が続きます。観光シーズンなので、多くの行楽客がバイエルンを訪れていますが、アルプスの森の奥深くまで来る人は少ないようです。静かな森の中を1時間ほどゆっくり歩くと、クランツバッハ城(Schloss Kranzbach)という石造りのお城に到着。そこからさらに1時間ほど進むと、1912年に建てられたエルマウ城(Schloss Elmau)が見えてきました。ここは現在、スパやコンサートホールを備えた高級リゾートホテルとなっています。雄大な自然に囲まれて建つロマンチックな建物は、2005年に火事で一部消失してしまいましたが、現在は美しく修復されています。
エルマウ城は、特別な1日にふさわしい豪華ホテル
そのホテルの横からさらにハイキングコースを進みます。ここからはコースの脇を小川が流れていて、せせらぎと木漏れ日を楽しみながら歩きました。ミッテンヴァルトに到着するまでの間には湖が2つあり、歩き疲れたら、湖岸のカフェや岸辺でひと休みできるようになっています。澄んだ水の中を悠々と泳ぐ魚たちを見ているだけでも、癒されました。
中世、ミッテンヴァルトはこの地域一帯の要衝の地として栄え、今も市の中心部には当時を偲ばせる古い建物や教会が残っています。また、ここはバロック時代からウィーンやパリと並んで優れたヴァイオリン職人が集まる町としても知られていました。その伝統は現在まで引き継がれており、町には工房が点在し、ヴァイオリンのモチーフがあちこちに飾 られています。また、ヴァイオリン博物館(Geigenbau Museum)ではヴァイオリン作りの歴史を垣間見ることができます。自然と文化を満喫できる充実のハイキング、皆さんもぜひお試しあれ!
凝った装飾が施された建物が立ち並ぶ ミッテンヴァルトの中心部
エルマウ城:
www.schloss-elmau.de
ヴァイオリン博物館:
www.geigenbaumuseum-mittenwald.de
2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。会社員を経て独立し、現在はフリーランスとして活動中。家族は夫と2匹の猫で、最近の趣味はヨガとゴルフ、フルート。