ジャパンダイジェスト

国際救助犬ショー

7月になると、シュトゥットガルトとその周辺各地で夏祭りが開催されます。先日、隣町エスリンゲンの市民祭に出掛けたとき、一風変わった舞台セットを目にしました。消防団の訓練用の壁らしきものが立っていて、窓の周りに赤い炎と黒い煙の絵が描かれています。よく見ると壁の裏にある床も、ところどころはしごや不安定な板になっていました。何だろうと不思議に思っていたら、陽気な司会者が登場し、救助犬ショーの始まりを告げました。

まずは訓練士と救助犬ペアの紹介から。訓練士はほぼ全員地元出身者でしたが、犬の出身地は欧州各地からアメリカ大陸まで国際色豊か。犬の平均年齢は意外と高めで、最高齢は12歳、人間でいうと70歳以上でしょうか。ショーが始まると、トンネルをくぐったり、シーソーを渡ったり、頭を下げてはしごを降りたり、普通の犬ができないようなアクションを次々と披露。訓練士と救助犬の信頼関係がいかに強いかが伝わってきました。

シーソーの上を渡る救助犬
シーソーの上を渡る救助犬

参加型のプログラムもたくさんありました。20人くらいの子どもが列になって、前の子にぴったりくっつくようにして脚でトンネルを作り、救助犬がその狭いトンネルをくぐるという難しい技も難なくクリア。このような救助犬とのスキンシップに、子どもたちは大喜びでした。

最後は、小屋に隠れた子どもを救助犬が探し出すショー。舞台の四隅にある小屋のうち1つに子どもが1人隠れ、数十人の子どもが舞台のあちこちで遊ぶという状況が作られました。不思議なことに、「行方不明」になった子どもの匂いなど、手掛かりとなるようなものを一切与えてなくても、救助犬は小屋にいる子どもの存在に気付き、訓練士に知らせるのです。このメカニズムは、科学的にもまだ解明されていないそうです。

このショーの主催者は、オーストリアに本部を置き、世界38カ国の100以上の団体から成る国際ボランティア組織、国際救助犬連盟(IRO)のドイツ支部。IROはドイツに15の団体を持ち、そのうちの1つ「SAR Germany」がエスリンゲンにあります。救助犬を使った救助活動が認められて2003年に国連の救助システムに組み込まれ、世界のどこで災害が起きてもすぐに駆け付けられる体制を整えています。SAR Germanyもインドネシアやトルコの大地震の際に大活躍し、これまでに6人もの尊い命を助けました。ボランティア 組織であるため、ショーを通して主に募金活動を行っているそうです。シュトゥットガルト周辺で見かけたら、ぜひ協力してあげてくださいね。

www.sar-germany.de

はしごの上を走る犬。
足場が悪くても大丈夫

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
http://kakueinan.wordpress.com
 
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