ドイツの文豪フリードリヒ・フォン・シラーの生まれた町として有名なマールバッハは、シュトゥットガルトの北20キロに位置しています。
シュトゥットガルト中央駅からSバーンでおよそ30分。マールバッハ駅で降りると、徒歩10分くらいで旧市街地に入ります。かわいらしいドイツの木組みの家々が立ち並び、半日もあればすべてを見て回れるほどの小さな町です。そして、町に足を踏み入れると、すぐにシラーの生家がありました。典型的な職人の家で、シラー一家はこの小さな家の1階の1部屋だけを間借りして住んでいたそうです。シラーは1759年にこの家で生まれ、4年後に別の場所に移りました。決して裕福とは言えない生活の中で、作品に現れているような強い反骨精神が育まれたのかもしれません。
ドイツ近代文学博物館
旧市街地を通り抜け、丘の上へとひたすら進むと、眺めの素晴らしい高台に到着します。ここには文学関連の3つの施設、近代文学博物館、シラー国立博物館、ドイツ文学史料館があります。コンクリート打ちっ放しのモダンな建物は近代文学博物館。有名な英国人建築家デイヴィッド・チッパーフィールドの設計によるもので、この建築を見るためだけにここを訪れる見学者も少なくありません。
チケットを購入し、まずはこちらを見学しました。建物は確かに素晴らしく、重厚感と軽やかさが上手く調和し、空間は程良い照明で照らされていて、とても落ち着きます。その中でも、ある展示空間が特に印象に残りました。それは、横からLED照明が当てられたガラス製の棚が広いスペースに隊列を成すように配置された空間で、ガラスに乱反射した照明が幻想的な光景を演出していました。この棚には、ドイツに因んだ文豪たちの直筆原稿などが展示されています。草稿はもちろん、プライベートの手紙や写真、イラスト、中にはアート作品に近いものもありました。余計な説明文は一切なく、各史料には文豪の名前だけが記されています。カフカ、トーマス・マン、ヘルマン・ヘッセ……。展示品はすべてオリジナルにこだわっているそうで、見る側としては興奮の連続でした。この空間で1日を過ごしても、きっと飽きることはないでしょう。
無限の奥行きを持つ空間に浮かび上がるような展示
近代文学博物館から続く通路を通って、シラー国立博物館へ。空間がクラシックなものにガラリと変わりました。ここは、主にシラーの肖像や著作が展示されています。ドイツ文学史料館は世界的にも最も重要な文学機関の1つと言われ、ドイツ語文献の所蔵では世界最大。1750年から今日までの文学や文化的背景に関するドイツ語文献はもちろん、文学史上重要とされる他言語の資料も収められています。また、印刷や視聴覚およびデジタル形式による資料提供も行っています。入場料10ユーロ(3館共通)。www.dla-marbach.de/startseite/index.html
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com